A棟は1992年6月に竣工してから、30年以上にわたって直し続けてきました。組合員向けの「修繕履歴」のコーナーには、理事会議事録と議案書から拾った工事の記録が1993年分から並んでいます。いつ、どの設備を、いくらで、どの業者が直したかの一覧です。
一覧は数が多く、1件ずつ読んでも全体は見えてきません。このセクションでは、その記録をまとめて眺めたときに見えてくることを書いていきます。何が繰り返し壊れてきたのか、いつ方針が変わったのか、大きな工事の前後で何が起きたのか。
だれでも読めるページなので、個別の住戸の事情や、進行中の案件そのものは扱いません。
機械式駐車場いちばん手のかかってきた設備
修繕履歴に出てくる設備を数えると、いちばん多いのは機械式駐車場です。立体駐車場やロボットゲート、チェーンゲートを別の名前で数えても、なお最多です。次がエレベーター、その次が植栽と続きます。同じ工事が議案書と議事録の両方に載るため、ここでは件数そのものではなく、多い少ないの傾向として見ています。
記録は1996年から途切れずに続き、2002年から2003年、2005年、2007年、2014年から2016年に山があります。パレットの異音、ガイドローラーの摩耗、チェーンの調整、上段からの水漏れ。同じ種類の不具合が、年を置いて何度も出てきます。2002年1月の臨時総会でガイドローラーの取替が特別決議にかかったときには、メーカーの耐用年数5年をすでに超えていたと議案書が書いています。
直し続けるか、やめるか。この問いが最初に総会に出たのが2007年です。同年3月に二つの見積が理事会で確認されています。39機を撤去してドブ付けメッキ仕様にする工事が1,890万円、41機を撤去して埋め戻す工事が1,418万円。そして6月3日のA棟B棟合同臨時総会で「屋外機械式駐車場の撤去及び改修工事承認の件」が特別決議で可決されました。同じ総会で駐車場運営規則の改正と使用料の改定も決まっています。設備を変えると、使い方と料金も一緒に変わります。
やめる判断はその後も続きます。2020年9月の第28回定期総会で機械式駐車場の埋め戻し工事が特別決議で可決され、5,000,000円が計上されました。2022年9月の第30回定期総会でも同じ名前の議案が可決され、2026年9月の第34回定期総会にもまた上程されています。理由は議案書に書かれているとおりで、車が大きくなって地下の段が使われなくなったからです。
設備を減らすことも修繕の一部です。30年分の記録は、直す判断と、直さずに減らす判断の両方が積み重なってできています。
給排水水は何度でも出てくる
記録の数では、建物と外構に次いで給排水と駐車場が並びます。水まわりの記録には、他と違う形があります。一つの漏れが、何度も記録に現れるのです。
2016年1月の例がわかりやすいでしょう。公園下駐車場の排水樋のエルボ部が破損して水が漏れ、16日、17日、23日、30日と、同じ箇所の記録が半月のあいだ繰り返し出てきます。破損の確認、調査、手当て、その後の確認が、それぞれ別の記録として残るからです。漏れは場所がわかりにくく、止まったかどうかもすぐには決まりません。修繕履歴に「調査」が何度も出てくるのはそのためです。
1件ずつの修理を続けてきた給排水について、まとまった工事の検討が始まったのは2023年です。9月17日の第31回定期総会で「給水・排水管設備修繕工事コンサルタント会社決定及び発注に関する件」が特別決議で可決されました。漏れるたびに直すのではなく、配管そのものを計画して直す段階に入ったことになります。
なお、配管が専有部分なのか共用部分なのかという区分の話は、修繕の記録とは別の筋です。「管理規約を考える」の第7条2項4号の項に書いています。
2004年・2017年2回の大規模修繕と、その前後
A棟はこれまでに大規模修繕を2回行っています。修繕履歴を年ごとに眺めると、工事の年より、その前後の年のほうが記録が多いことに気付きます。
1回目の準備は2002年に始まりました。12月22日の第13回臨時総会でコンサルタント会社の決定が特別決議で可決され、発注先はAAA総合設計です。施工会社が決まったのは2004年8月8日のA棟B棟合同臨時総会で、大成ユーレックに決まりました。調査と診断から施工会社の決定まで、2年近くかけています。
2回目も同じ順序です。2016年6月5日の合同臨時総会でコンサルタント会社としてA-1設計が決まり、工事は2017年10月初旬に着手して2018年5月末に完了しました。施工は小野工建です。2018年6月の臨時総会に出された完了報告によれば、本体工事費用が309,960,000円、予備費が20,000,000円、実際に生じた追加工事が13,303,540円でした。
目を引くのは支払いの組み方です。本体の残額79,960,000円を35回に分けて毎月856,000円ずつ払い、途中でマンション積立保険の満期返戻金50,000,000円を充てる計画になっています。完済の予定は平成33年(2021年)5月末。工事は8か月で終わっても、支払いは3年続きます。
工事が終わったあとに見えてくるものもあります。2018年9月の定期総会では、大規模修繕の完了後に理事会が共用廊下を巡回し、置かれていた私物を確認したうえで、管理規約の改定が特別決議にかけられました。きれいになって初めて、何が置かれているかがはっきり見えたということです。