サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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法律と規約標準管理規約の「必要箇所への立入り」とは新着

上の階の部屋で水漏れが起き、下の階の天井にしみが広がっているのに、上の部屋の住人が留守で連絡がつかない。マンションでは、こうした場面が実際に起こります。専有部分(各住戸の中)は区分所有者のものですから、管理組合や理事長でも、勝手に入ることはできません。かといって、水漏れを放置すれば被害は広がります。この記事では、国土交通省の標準管理規約(単棟型)が、この板ばさみをどう整理しているかを、条文の順に確かめます。標準管理規約とは、管理組合が自分たちの規約をつくるときのひな形として国が示しているものです。参照したのは令和7年10月17日改正の版で、立入りを定めるのは第23条です。

第23条が定めている五つのこと

第23条の見出しは「必要箇所への立入り等」です。五つの項で、次のような仕組みになっています。
  1. 第1項:前の2条(第21条の敷地・共用部分等の管理、第22条の窓ガラス等の改良)で管理を行う者は、管理に必要な範囲で、他の人が管理する専有部分や専用使用部分に立ち入ること、または自分でそこの保存行為(建物の価値を保つための修理や維持)をすることを、請求できる。
  2. 第2項:請求された人は、正当な理由がなければ拒否してはならない。
  3. 第3項:正当な理由なく拒否した人は、その結果生じた損害を賠償しなければならない。
  4. 第4項:災害や事故などで、急いで立ち入らなければ共用部分や他の専有部分に物理的または機能上の重大な影響が出るおそれがあるときは、理事長が自ら立ち入り、保存行為をすることができる。理事長は、委任した人にそれをさせることもできる。
  5. 第5項:立入りをした人は、速やかに、立ち入った箇所を元の状態に戻さなければならない。
第1項から第3項は、まず請求し、断られたら拒否した側が責任を負うという、通常の手順です。第4項は、その手順を飛ばせる例外です。

通常の立入り:請求と「正当な理由」

標準管理規約のコメント(条文に付く国土交通省の解説)は、第1項で想定している場面を例で示しています。ある住戸の中の配管から水が漏れて共用部分に被害が出ているとき、漏れ元の住戸に立ち入り、その住戸の区分所有者に代わって漏水箇所を直す場合などです。 請求を断れるのは、正当な理由がある場合だけです。ただ、何が正当な理由にあたるかは、今回確かめた条文とコメントには書かれていません。たとえば工事の日時や範囲の連絡がなかった、立入りの必要性の説明がなかった、といった事情が正当な理由になるのかは、条文からは決まりません。判断は個別の事情によるため、一般論としては断定できません。

第4項の緊急の立入り:認められる範囲は狭い

第4項の立入りは、請求も承諾も待たずにできます。そのぶん、コメントは対象を絞っています。認められるのは、災害時などに共用部分で緊急の工事をするために必要な場合や、専有部分での大規模な水漏れのように、放置すれば他の専有部分や共用部分に重大な影響を与えるおそれがある場合に限る、という説明です。 また、コメントは、第4項を実際に使えるようにするため、管理組合が各住戸の合い鍵を預かっておく定めも考えられるとしています。ただし、プライバシーの問題があるため、マンションごとの事情を踏まえて検討する必要があるとも書いています。便利さと、住戸の中を守る気持ちとの間には、組合ごとに答えの違うところが残ります。

区分所有法との関係:第6条第2項

標準管理規約はあくまでひな形で、法律ではありません。法律の側で立入りに近いことを定めているのは、区分所有法第6条第2項です。e-Gov 法令検索で確かめたところ、この条は、区分所有者が自分の専有部分または共用部分を保存し、または改良するために必要な範囲で、他の区分所有者の専有部分などを使用することや、自ら保存することを請求できる、と定めています。そして、他の区分所有者が損害を受けたときは、償金(つぐないの金銭)を支払わなければならない、と続けます。確認した条文は、令和8年4月1日施行の版です。 ここで、損害の扱いを整理しておきます。標準管理規約の第23条第3項が定めるのは、正当な理由なく断った人が、その結果生じた損害を賠償する責任です。一方、立入りを受けた側が受けた損害(たとえば作業中に壁や床を傷つけた場合)の扱いは、第23条には書かれていません。第6条第2項の後段が、この方向の償金を定めています。第23条の第5項が原状回復を定めていることも、この点に関わります。

実際に使う前に

以上は国のひな形と法律の文面の話で、各マンションの規約が同じとは限りません。立入りの条項があるか、緊急時の立入りに誰が責任をもつか、鍵をどう扱うかは、それぞれの規約や細則で決まります。自分のマンションの定めは、管理規約のコーナーで確かめてみてください。

考えるための問い

  • 自分のマンションで、住戸の中の漏水が見つかり、住人に連絡がつかないとき、誰が、どの順番で動くことになっているでしょうか。
  • 緊急時のために各住戸の合い鍵を管理組合が預かることには、安心とプライバシーの両面があります。あなたは、どちらを重く見ますか。
  • 立入りの前に、日時や範囲を住人にどう知らせておくと、あとでもめにくいでしょうか。

出典