法律と規約標準管理規約の敷地・共用部分の管理 保存行為と計画修繕新着
マンションの廊下や外壁、バルコニーの手すり、窓ガラスが傷んだとき、誰が、どんな手続きで直すのでしょうか。国土交通省の標準管理規約(単棟型)は、第21条から第23条でこの問いに答えています。この記事は、その条文とコメント(条文の趣旨を説明した文書)をもとに、修繕や変更の「進め方」を整理します。自分の部屋のバルコニーが傷んだとき、勝手に業者を呼んでよいのか、管理組合に頼めるのかを判断する手がかりになります。
条文は、令和7年10月17日に改正された標準管理規約(単棟型)で確かめました。標準管理規約は国が示すひな型で、各マンションの規約そのものではありません。
原則は管理組合が責任と費用を持つ
第21条第1項は、敷地や共用部分などの管理は管理組合がその責任と負担で行う、と定めています。外壁も廊下も屋上も、組合員全員のものとして、組合がまとめて直すという考え方です。 ただし書きがあります。バルコニー等の保存行為のうち、通常の使用に伴うものは、専用使用権を持つ人が責任と負担で行います。保存行為とは、区分所有法第18条第1項ただし書にある言葉で、建物の現状を維持するための行為を指します。同条は、共用部分の管理は集会(総会)の決議で決めるのを原則としつつ、保存行為は各共有者ができるとしています。標準管理規約はこの条文の第2項(規約で別段の定めをしてよい)に基づいて、保存行為の担い手を別に決めているわけです。 専用使用権とは、バルコニーのように共用部分でありながら特定の人だけが使える権利です。「通常の使用に伴う」とはどこまでか
コメントは、通常の使用に伴う保存行為の例として、バルコニーの清掃と、窓ガラスが割れたときの入替えを挙げています。日常の使い方から生じる手入れは、使う人の負担です。 一方、バルコニー等の経年劣化への対応は、管理組合が責任と負担で行う計画修繕だとされています。計画修繕とは、長期修繕計画に沿って周期的に行う修繕のことです。 ここには例外があります。コメントによれば、長期修繕計画作成ガイドラインで管理組合が行うとされている周期より短い期間で劣化が起き、しかも他のバルコニーと比べて劣化が顕著な場合は、特段の事情がない限り専用使用権者の「通常の使用に伴う」ものとして、その人の負担で保存行為を行います。ただし、結果として管理組合の計画修繕の中で劣化が解消されるのであれば、管理組合の負担になります。 破損の原因でも扱いが分かれます。第三者の犯罪行為による破損が明らかな場合は、通常の使用に伴わないものなので、管理組合の負担です。同居人や賃借人による破損は、専用使用権者の負担とされています。勝手に直してよいのは緊急のときだけ
第21条第3項(電磁的方法、つまり電子的な手段が使えない場合の規定)は、区分所有者が敷地や共用部分の保存行為をするには、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受ける必要がある、としています。第1項ただし書の場合は承認なしで行えます。 さらに、専有部分の使用に支障が出ていて緊急を要する場合は、承認を待たずに行えます。コメントの例は、台風などで窓ガラスが割れ、雨の吹き込みを防ぐために、同じ仕様のガラスに張り替えるケースです。電磁的方法が使える場合は、書面に代えて電磁的方法による承認でもよいとされています。 承認の申請先は理事長ですが、承認するかどうかは理事会の決議で決まります。この点はコメントが明記しています。申請と承認の手続きは、専有部分の修繕等の手続き(第17条)を準用します。承認なしに保存行為をした場合、その費用は行った区分所有者の負担です(第5項)。 災害等の緊急時は、理事長が総会や理事会の決議を経ずに、必要な保存行為をすることができます(第6項)。コメントは、給水管や排水管の補修、被災箇所の点検、破損箇所の小修繕などを例に挙げています。専有部分の設備と一体の管理
第21条第2項は、専有部分にある設備のうち共用部分と構造上一体となった部分について、共用部分の管理と一体で行う必要があるときは、総会の決議を経て管理組合が行えるとしています。コメントの例は配管です。 配管の清掃にかかる費用は、管理費から出せます(第27条第三号の共用設備の保守維持費)。取替え費用のうち専有部分に係る分は、各区分所有者が実費で負担します。ただし、共用部分と専有部分の配管を同時に取り替えると費用が下がる場合には、一体の工事も考えられます。その場合は、あらかじめ長期修繕計画に専有部分の配管の取替えを載せ、費用を修繕積立金から出すことを規約に定め、先に自費で工事をした人への補償の有無も十分に考える、とコメントは述べています。窓ガラスや玄関扉の改良は計画修繕で
第22条は、各住戸に付属する窓枠、窓ガラス、玄関扉などの開口部について、防犯、防音、断熱といった性能を上げる改良工事は、管理組合が責任と負担で、計画修繕として行うと定めています。 コメントは、窓枠、窓ガラス、玄関扉(玄関扉は錠と内部塗装部分を除く)は専有部分に含まれず、共用部分として扱われると説明しています。区分所有法が、形状や効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更を、集会の普通決議で決められるとしていることも、背景にあります。 管理組合の工事がすぐには実施できないときは、区分所有者が理事長に申請して承認を受け、自分の責任と負担で改良工事をする道もあります。コメントは、治安上の問題を踏まえた防犯性の向上や、結露に由来するカビなどを改善する断熱性の向上が、一部の住戸で急に必要になる場合を想定しています。立入りと保存行為を頼む権利
工事や点検のために他人の専有部分へ入る必要が出ることもあります。第23条によると、管理を行う者は、必要な範囲で、他の人が管理する専有部分や専用使用部分への立入り、または保存行為の実施を請求できます。請求された人は、正当な理由がなければ断れません。正当な理由なく断って損害が出たときは、賠償の責任を負います。 緊急の場合には、理事長が自ら立ち入って保存行為を行えます。立入りをした人は、速やかに原状に復さなければなりません。考えるための問い
- 自分のバルコニーや窓の不具合が見つかったとき、まず誰に連絡し、どの書類で申請することになっているでしょうか。管理規約のコーナーで、A棟の規約がこの標準管理規約とどこが同じでどこが違うかを確かめてみてください。
- 長期修繕計画に、窓ガラスや玄関扉の改良、バルコニーの修繕は入っているでしょうか。入っていなければ、劣化が早い住戸が出たとき、誰の負担とするかが争いになりかねません。
- 緊急時に理事長が単独でできる保存行為の範囲と、費用の限度額は、規約や細則で決まっているでしょうか。