法律と規約総会の議決事項は、どの多数決で決めるのか
総会の議題を見ると、予算、決算、修繕工事、管理会社との契約など、さまざまな案件が並びます。賛成が何割あれば可決なのかは案件ごとに違い、「過半数でよい」ものと「4分の3」が要るものが混ざっています。どの案件がどちらに当たるかを知っていると、議案書を読むときに、その案件が通るために何人の賛成が要るのかを自分で見通せます。この記事では、国土交通省の「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年10月17日改正)を原文で確かめ、第48条(議決事項)と第47条(総会の会議及び議事)をもとに、何をどの多数決で決めるのかを仕分けます。条番号は改正で変わることがあり、今回確認した版では総会の議事が第47条、議決事項が第48条でした。
第48条は「総会の決議が要る事項」の一覧
第48条は、総会の決議を経なければならない事項を18号に分けて挙げています。収支決算と事業報告(第三号)、収支予算と事業計画(第四号)、長期修繕計画の作成又は変更(第五号)、管理費等の額と賦課徴収方法(第六号)、規約や使用細則等の制定・変更・廃止(第一号)、役員の選任と解任(第二号)、組合管理部分に関する管理委託契約の締結(第十七号)などです。最後の第十八号は「その他管理組合の業務に関する重要事項」で、一覧にない事項でも重要なものは総会で決める建て付けになっています。 ここで押さえておきたいのは、第48条は「総会で決める事項」を列挙しているだけで、賛成の割合は書いていないことです。割合は第47条にあります。第48条の各号を、第47条の三つの型のどれに当てはめるかが、仕分けの作業になります。第47条の三つの多数決
第47条は、まず総会の成立に、議決権総数の過半数を有する組合員の出席を求めています(第1項)。コメントによると、令和7年の改正でここは「半数以上」から「過半数」に改められました。WEB会議で出席した組合員は、議決権を行使できる立場であれば出席に数えられます。 通常の議事は普通決議です。出席組合員の議決権の過半数で決まります(第2項)。書面や代理人で議決権を行使した人も出席に算入されます(第7項)。第48条の各号のうち、次に挙げる特別決議の事項に当たらないものは、第47条の文言のうえでは普通決議で決まります。予算、決算、長期修繕計画、管理費等の額、役員の選任、管理委託契約がこれに当たります。 特別決議(4分の3)は第3項に挙げられています。要件は、組合員総数の過半数で、かつ議決権総数の過半数を有する組合員の出席があり、出席組合員とその議決権のそれぞれ4分の3以上の賛成があることです。対象は次の五つです。- 規約の制定、変更、廃止
- 敷地及び共用部分等の変更(形状や効用の著しい変更を伴わないものなどを除く)
- その変更に伴って必要となる専有部分の保存行為等
- 区分所有法第58条第1項、第59条第1項、第60条第1項の訴えの提起
- その他、総会でこの方法により決めると定めた事項
工事は、内容によって型が分かれる
案件の名前だけでは型が決まらない代表が、共用部分の工事です。第47条第3項第二号は、共用部分等の変更のうち「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を特別決議から外しています。コメントは、これを区分所有法の考え方を確認的に書いたものと説明しています。つまり、軽い変更は普通決議、大がかりな変更は特別決議という分け方です。 コメントには、具体例の考え方が示されています。ただし「基本的には各工事の具体的内容に基づく個別の判断による」と断っているので、目安として読むのが妥当です。- 普通決議で実施可能と考えられるもの:鉄部塗装、外壁補修、屋上等の防水、給排水管の更生・更新、照明や消防用設備、エレベーター設備の更新といった計画修繕。防犯カメラの設置、加工が小さい宅配ボックスの設置、階段へのスロープ併設と手すりの追加
- 特別決議(4分の3)と考えられるもの:集会室や駐車場、駐輪場の増改築のうち、大規模なものや著しい加工を伴うもの
- 3分の2と考えられるもの:階段室の改造や外壁への外付けでエレベーターを新設する工事(第4項第一号ロ)、耐震性を満たすために基礎を切断して免震構造にするような、基本的構造部分への加工が大きい耐震改修(同号イ)
区分所有法との関係
区分所有法には、集会の議事は法律か規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決めるという一般則があります(第39条第1項)。令和8年4月1日以降の現行の条文でも、規約の設定・変更・廃止は4分の3以上(第31条第1項)、共用部分の変更は原則4分の3、瑕疵の除去とバリアフリーのための変更は3分の2(第17条第1項、第5項)とされています。標準管理規約の第47条は、この法律の要件を、管理組合の運営に使いやすい形で並べ直したものと読めます。 法律が規約での緩和を認めている点もあります。共用部分の変更では、4分の3のうち区分所有者の人数の要件を、規約で過半数まで下げることができます(第17条第1項)。議決権の4分の3は下げられません。一方、規約の変更の4分の3には、同じ形の例外が条文に見当たりません(第31条第1項)。 反対に、普通決議で決まる事項を重くすることはできます。コメントは、普通決議は総組合員の議決権総数の4分の1を超える賛成で成立しうるため、大規模修繕工事のように多額の費用を要する事項は、組合員総数と議決権総数の過半数、あるいは議決権総数の過半数で決める旨を規約に定めることもできる、としています。自分のマンションの規約を確かめる
標準管理規約はひな型であり、各マンションの規約が同じとは限りません。決議事項の一覧も、多数決の割合も、規約で変えている場合があります。議案書を見るときは、その案件が規約のどの条にあたるのか、どの割合が要るのかを、自分の規約で確かめてください。考えるための問い
- 最近の総会で可決された議案のうち、普通決議で決まったものと特別決議で決まったものはどれでしょうか。その分け方に、自分は納得できるでしょうか。
- 大規模修繕工事のように費用の大きい案件を、通常の過半数で決めることに不安はないでしょうか。規約で要件を重くする案には、どんな利点と手間があるでしょうか。
- 工事の議案で「共用部分の形状又は効用の著しい変更にあたるか」が争点になったら、誰がどのように判断するのが望ましいでしょうか。