お金修繕積立金は何に使えるのか 標準管理規約第28条を読む
修繕積立金は、使いみちと取り崩しの手順が規約で決まっているお金です。この記事では、国土交通省の標準管理規約(単棟型・令和7年10月17日改正)の第28条を中心に、積立金で払える費用の範囲、管理費との分け方、取り崩すときの決議を順に確かめます。総会で「この工事費を積立金から出します」という議案が出たときに、それが規約の想定する使い方なのかを自分で見当をつけられるようになります。
積立金は「特別の管理」にだけ使える
第28条第1項は、積み立てた修繕積立金を、次の各号の「特別の管理に要する経費」に充てる場合に限って取り崩せると定めています。- 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
- 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
- 敷地及び共用部分等の改良又は変更
- 建替えや建物の更新、建物敷地売却、建物取壊し敷地売却、取壊し(以上をまとめて「マンション再生等」と呼びます)に係る合意形成に必要となる事項の調査
- 修繕積立金の管理及び運用
- その他、敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
管理費との線引き
管理費のほうは、第27条が「通常の管理に要する経費」に充てるものとして、管理員の人件費、公租公課、共用設備の保守維持費、備品費や事務費、損害保険料、経常的な補修費、清掃費、委託業務費、管理組合の運営費などを挙げています。毎年決まって出ていく費用が管理費で、周期的または臨時の大きな支出が修繕積立金、という分担です。 この二つは、お金の入れ物も分けておく必要があります。第28条第4項は、修繕積立金を管理費とは区分して経理しなければならないと定めています。管理費の会計が赤字になったとき、積立金の残高で穴埋めしたくなる場面があります。区分経理は、そうした流用を帳簿の上で見えるようにし、将来の工事のための財源を守る仕組みです。 ただし、費用がどちらの財布に属するかは、すべてが一律に決まっているわけではありません。コメントには次の例があります。- 長期修繕計画の作成や変更に要する経費と、そのための劣化診断の経費は、管理組合の財産状態に応じて、管理費と修繕積立金のどちらからでも充てられる
- 修繕工事の前提としての劣化診断の経費は、修繕工事の一環なので、原則として修繕積立金から取り崩す
- 修繕積立金の管理及び運用に要する費用(銀行口座の残高証明書の発行手数料など)は、取崩しの対象として規定せず、管理費から支出することもできる
取り崩すには総会の決議がいる
積立金を取り崩す手続きについては、第48条が総会の議決事項を並べています。その第十号が、第28条第1項に定める特別の管理の実施と、それに充てる資金の借入れ及び修繕積立金の取崩しです。つまり、積立金を使う工事は、理事会だけで決めずに総会にかけるのが標準管理規約の形です。 総会の決議の重さは、第47条に書かれています。総会の成立には議決権総数の過半数を有する組合員の出席が必要で(第1項)、議事は出席組合員の議決権の過半数で決まります(第2項)。第48条第十号の取崩しの決議は、この普通の決議で足ります。 一方、工事の中身によっては、決議の重さが変わります。敷地及び共用部分等の変更(形状又は効用の著しい変更を伴わないものなどを除く)は、第47条第3項第二号により、組合員総数の過半数かつ議決権総数の過半数の出席と、出席組合員及びその議決権の各4分の3以上の賛成が要ります。共用部分の瑕疵の除去や、高齢者・障害者の移動の負担を軽くするための変更は、第4項により各3分の2以上です。取崩しの議案と工事そのものの議案では、それぞれにどの要件が当てはまるのかを分けて考える必要があります。この点は、規約の書き方や議案の組み立て方で整理が変わりうるため、標準管理規約から言えるのはここまでです。 例外が一つあります。第54条第1項第十五号は、災害等で総会の開催が困難な場合の応急的な修繕工事の実施等を理事会の決議事項とし、同条第2項は、その工事に充てる資金の借入れと修繕積立金の取崩しも、第48条にかかわらず理事会で決議できるとしています。コメントでは、ライフラインの応急的な更新などが応急的な修繕工事の例に挙げられています。非常時に限った特例であり、平時の取崩しは総会が決めます。借入れの返済と、建替えなどの準備に使う場合
第28条第3項は、第1項の経費に充てるために管理組合が借入れをしたとき、修繕積立金でその返済に充てられると定めています。借入れの是非そのものは別の記事で扱っているので、ここでは、返済に積立金を使えることが規約に書かれている点だけを押さえておけば足ります。 第2項は、建替え決議などのマンション再生等に係る決議のあとでも、事業の認可を得るまでの間に計画や設計などの経費が必要なら、積立金を取り崩せるとしています。取壊し以外の事業では、組合の消滅時に事業へ参加しない区分所有者のものになる積立金相当額を除いた範囲が上限です。建替えを現実に検討する段階になって初めて関わってくる規定ですが、積立金の使いみちが修繕だけではなく、再生等の準備にまで及びうることは知っておいてよいでしょう。考えるための問い
- 総会に出てきた積立金の取崩し案は、第28条第1項のどの号に当てはまる支出でしょうか。工事費の本体と、診断や設計などの準備費用は、それぞれ管理費と積立金のどちらから出す整理になっているでしょうか。
- 管理費と修繕積立金の会計は、帳簿の上でも口座の上でも区分されているでしょうか。決算書や総会資料から、積立金の残高の動きを追うことはできるでしょうか。
- A棟の規約は、積立金の取崩しの決議や、災害時の理事会の権限をどう定めているでしょうか。管理規約のコーナーで、標準管理規約の第28条、第48条、第54条に当たる条文を確かめてみてください。