法律と規約標準管理規約と民泊 第12条と禁止の決議
マンションの一室を旅行者に貸す「民泊」を、管理規約でどう扱うかを取り上げます。国土交通省の標準管理規約(単棟型、令和7年10月17日改正)の第12条とそのコメントを手がかりに、規約の書き方、住宅宿泊事業法との関係、禁止を定めるときの決議を順に見ます。規約に民泊の定めがないと、近所の部屋で突然宿泊事業が始まったときに、組合は何を根拠に話し合えばよいのかが曖昧になります。事が起きる前に、規約の型と決議の要件を知っておくと役に立ちます。
第12条が定める専有部分の用途
標準管理規約の第12条第1項は、区分所有者が専有部分を「専ら住宅として使用する」ものとし、他の用途に使ってはならないと定めています。専有部分とは、各住戸のように区分所有権の対象となる部分のことです。コメントによると、住宅としての使用かどうかは、そこに居住者の生活の本拠があるかどうかで判断します。毎日入れ替わる宿泊客の滞在は、この意味での生活の本拠とは言いにくく、第1項だけでは民泊の扱いがはっきりしません。民泊には二つの制度がある
民泊と呼ばれるものは、法律上は二つに分かれます。一つは住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)にもとづく事業です。同法第2条第3項は、旅館業法の営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業で、宿泊させる日数が一年間で180日を超えないものと定義しています。事業を営む人は、同法第3条第1項により都道府県知事への届出が必要です。 もう一つは、旅館業法第3条第1項の簡易宿所の許可を得て行うものです。コメントは、これを旅館業の営業として行われるものと位置づけ、通常は第12条第1項の用途に含まれないと考えられるとしています。可能にしたいときは、その旨を規約に明記することが望ましいとされています。 なお、旅館業法や住宅宿泊事業法に違反して行われる事業は、規約に書くまでもなく当然に禁止されているというのがコメントの趣旨です。規約の書き方の型
第12条のコメントは、住宅宿泊事業について可能か禁止かを第2項で明記することが望ましいとして、二通りの規定例を示しています。可能とする場合は、住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む住宅宿泊事業に使用できると書きます。禁止する場合は、同じ事業に使用してはならないと書きます。 中間の型もあります。コメントは、一定の態様に限って認める例を挙げています。住宅宿泊事業者が同じマンション内に住んでいる「家主居住型」だけを認める例と、事業者が自分の生活の本拠にしている住戸で宿泊させる「家主同居型」だけを認める例です。さらに、新規分譲時の原始規約などで、可否を使用細則に委ねる例も示されています。使用細則とは、規約の細かい運用を定める別の決まりのことです。 禁止の範囲を広げる書き方もあります。コメントは、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を行う用途に使ってはならないという規定を置くことがあり得るとしています。また、事業そのものだけでなく、その前段階の広告掲載や募集、勧誘まで禁じる規定を置くこともあり得るとしています。 可能とする場合には、あわせて決めておくことがあります。コメントは、住宅宿泊事業法第13条で掲げることとされている標識の掲示場所などの扱いを、使用細則で明確にしておくことが望ましいとしています(第18条関係)。また、管理組合が事業の開始を把握できるように、届出を行った区分所有者に管理組合への届出を求める規定も有効だとしています(第19条関係)。 賛否の分かれる論点なので、コメントの考え方も示しておきます。コメントは、マンションが多数の区分所有者による共同生活の場であり、その維持のための法的手段が区分所有法に特に設けられているという特性をふまえ、個別の事情によっては家主居住型に限って可能とするケースも考えられると述べています。全面禁止、全面容認のほかに、段階的な選び方があるということです。住宅宿泊事業法の側から見た管理規約
届出をする側にとっても、管理規約は無関係ではありません。観光庁の案内ページによれば、マンションで住宅宿泊事業を営む人は、届出の前に、管理規約で禁止されていないかを確認する必要があります。届出書には、区分所有の建物について、規約に住宅宿泊事業を禁止する旨の定めがないこと、規約に定めがない場合は管理組合に禁止する意思がないことを記載します。 同じページは、禁止する旨の定めの範囲も説明しています。住宅宿泊事業そのものを禁じる定めのほか、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業を禁じる定めも含まれます。一定の態様だけを認める規約では、それ以外の態様は禁止されていると解されます。また、禁止する意思がないとは、総会や理事会で、住宅宿泊事業を営むことを禁止する方針の決議がないことを指すとされています。規約に定めのないマンションでも、総会や理事会の決議が届出に関わってくるということです。禁止を定める規約変更の決議
規約に民泊禁止の定めを加えるのは、規約の変更にあたります。標準管理規約(令和7年10月17日改正版)の第47条第3項第一号では、規約の制定、変更、廃止は特別の決議の対象です。出席が必要なのは、組合員総数の過半数で、かつ議決権総数の過半数を有する組合員です。そのうえで、出席組合員とその議決権の、それぞれ4分の3以上の賛成で決めます。 コメントによると、令和7年の区分所有法改正で、4分の3以上の特別多数決議に出席者による決議が可能になり、あわせて定足数(総会が成立するのに必要な出席の数)の規定が設けられました。標準管理規約の定足数の書き方は、この改正に合わせて見直されています。改正後の区分所有法の施行日は令和8年4月1日と、国土交通省の標準管理規約のページに記されています。ご自身のマンションの規約の条番号や定足数は、標準管理規約と同じとは限りません。 第47条第9項には、規約の変更が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすときは、その組合員の承諾が必要で、正当な理由なく拒否してはならないという定めもあります。すでに適法に民泊を営んでいる区分所有者がいる場合に、この定めがどう働くのかは、今回確かめた資料では確認できませんでした。実際の変更を考えるときは、専門家への相談をおすすめします。 自分のマンションの規約が民泊をどう扱っているかは、管理規約のコーナーで確かめてみてください。考えるための問い
- 自分のマンションの規約は、住宅宿泊事業を可能とも禁止とも書いていないのではないでしょうか。書かれていない場合、民泊が始まったときに、何を根拠に話し合いますか。
- 全面禁止、家主居住型だけ可能、使用細則への委任という選び方のうち、組合員の暮らしや建物の使われ方に最も合うのはどれでしょうか。それぞれの長所と心配な点を挙げてみてください。
- 規約の変更には、組合員と議決権の4分の3以上の賛成が必要です。意見が分かれたとき、総会の前にどんな場で、誰の意見を聞いておくと決議が円滑に進むでしょうか。