運営標準管理規約が定める監事の職務と権限
管理組合の役員というと理事長や理事が思い浮かびますが、標準管理規約には監事という役員も置かれています。この記事では、国土交通省が示す標準管理規約(単棟型)で監事がどんな仕事をし、どんな権限を持つのかを、条文に沿って整理します。理事の仕事ぶりを組合員の側から見る役目を誰が担っているのかが分かると、総会で出る監査報告の聞き方や、監事に立候補するかどうかを考えるときの手がかりになります。
条文の番号と内容は、「令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)」と同コメント(令和7年10月17日改正)の本文を実際に開いて確かめたものです。標準管理規約はひな型であり、各マンションの規約がこのとおりとは限りません。
監事は誰が、どう選ぶのか
標準管理規約の第35条は、管理組合に置く役員として、理事長、副理事長、会計担当理事、理事、監事を挙げています。人数は規約上「〇名」と空欄になっており、各マンションが決める形です。理事と監事は総会の決議で選任し、また解任します。理事長などの役職は、理事の中から理事会の決議で選びます。この違いから、監事は理事会が選ぶ役ではなく、総会が直接選ぶ役だと分かります。 役員になれない人も決まっています。第36条の2は、破産して復権していない人、拘禁刑以上の刑を受けて執行後5年を経過していない人、暴力団員等を、役員の欠格条項として挙げています。これは理事にも監事にも共通です。監事が行う監査の中身
監事の基本の職務は、第41条第1項にあります。管理組合の業務の執行と財産の状況を監査し、その結果を総会に報告することです。コメントによると、理事が総会に出そうとする議案を調べ、法令や規約に違反する点や著しく不当な点があれば総会に報告することも、この職務に含まれます。 監査するための権限は、第41条第2項が定めています。監事は、いつでも、理事と、第38条第1項第二号に規定する職員(理事長が理事会の承認を得て採用する職員)に対して、業務の報告を求めることができます。また、業務や財産の状況を調査することもできます。コメントは、これを報告請求権と調査権と呼んでいます。電子的記録で作られた書類は、必要に応じて遠隔地から電磁的方法で監査することも想定されています。 監査を受ける理事の側にも義務があります。第40条第2項は、管理組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を見つけた理事は、直ちにその事実を監事に報告しなければならないと定めています。コメントは、監事の監査をしやすくするための規定だと説明しています。理事会との関わり
第41条第4項は、監事は理事会に出席し、必要があると認めるときは意見を述べなければならないと定めています。コメントによると、この規定は以前の「できる規定」を改め、監査機能を強めるために、出席義務と意見を述べる義務を課したものです。 ただし、理事会は理事で構成されます(第51条第1項)。監事は構成員ではなく、出席して意見を述べる立場です。第53条第1項は、理事の半数以上が出席すれば理事会を開けると定めています。コメントも、監事が出席しなかったことは理事会の決議の有効性に影響しないと明記しています。出席は義務ですが、監事がいなければ決議が無効になるわけではありません。 理事に問題がある場合の動き方も、条文に段階が付いています。第5項は、理事が不正な行為をした、またはするおそれがあると認めるとき、あるいは法令、規約、使用細則等、総会や理事会の決議に違反する事実や著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく理事会に報告することを求めています。コメントは、この報告があった場合、理事会がその事実を検討する必要があるとしています。 報告のために理事会を開く必要があるときは、監事は理事長に理事会の招集を請求できます(第6項)。理事長が動かない場合に備えて、第7項が用意されています。請求から5日以内に、請求日から2週間以内の日を理事会の日とする招集通知が出されなければ、請求した監事自身が理事会を招集できます。臨時総会の招集権
第41条第3項は、管理組合の業務の執行や財産の状況について不正があると認めるとき、監事は臨時総会を招集できると定めています。通常、臨時総会を招集するのは理事長です。第42条第4項は、理事長が必要と認める場合に、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集できるとしています。監事の招集権は、これとは別に、理事会を通さずに使える権限として規約に置かれています。 もう一つ、組合員に認められた招集の道があります。第44条によると、組合員総数と議決権総数の各5分の1以上にあたる組合員の同意を得れば、理事長に総会の招集を請求できます。この請求に理事長が応じない場合、請求した組合員が自ら臨時総会を招集できます。監事の権限は、不正という具体的な事態に対応するもので、組合員の請求とは要件が異なります。利益が相反する場面での代表
管理組合と理事長との利益が相反する事項では、理事長は代表権を持ちません。第38条第6項は、この場合に監事または理事長以外の理事が管理組合を代表すると定めています。たとえば理事長が管理組合と取引をする場面を考えると、理事長が一方の当事者であるため、別の人が管理組合の側に立つ必要が出ます。 役員が自分や第三者のために管理組合と取引するときの扱いは、第37条の2に書かれています。理事会で重要な事実を開示し、その承認を得なければなりません。理事との兼職禁止について確かめたこと
標準管理規約には監事と理事の兼職を禁じる条文がある、と書かれた解説を見かけることがあります。今回開いた令和7年改正版の第35条の本文とコメントには、そうした規定を見つけられませんでした。第35条の本文は、役員の種類と選任方法を定めるにとどまっています。 一方、区分所有法には明文の定めがあります。令和8年4月1日施行の改正を反映した現行の条文では、第50条第2項が、監事は理事とも管理組合法人の使用人とも兼ねてはならないと定めています。ただし、同条は管理組合法人についての規定です。法人格を取得していない通常の管理組合に、この条文がそのまま適用されるかどうかは、今回確かめられませんでした。 区分所有法の第50条第3項は、監事の職務として、財産の状況の監査、理事の業務の執行の状況の監査、法令や規約に違反する事項などの集会への報告、そのための集会の招集を挙げています。標準管理規約の第41条と対応する内容です。第51条は、管理組合法人と理事との利益が相反する事項では監事が管理組合法人を代表すると定めています。考えるための問い
- 自分のマンションでは、監事は総会でどんな形で監査結果を報告していますか。報告を聞いた組合員が、質問や意見を出しやすい場になっていますか。
- 理事会の議事録には、監事の出席と発言が残っていますか。理事会に出席して意見を述べるという役割は、実際にどう果たされているでしょうか。
- 理事長と管理組合の利益が食い違う可能性がある場面(取引、報酬など)を、事前に想定していますか。そのとき誰が管理組合を代表するのか、規約で確かめてみてください。