サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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運営理事長は何をする人か、勝手にできないこと

マンションの理事長は、総会や理事会で決まったことを実際に動かす人です。ただ、どこまで一人で決めてよく、どこからは理事会や総会の承認が要るのかは、はっきり知られていません。この記事では、区分所有法(令和8年4月1日施行の改正後の条文)と、国土交通省の標準管理規約(令和7年10月17日改正、単棟型)で、理事長の位置づけ、勝手にできないこと、本人と管理組合の利益がぶつかるときの決まりを確かめます。標準管理規約はひな形であり、各マンションの規約は違っていることがあります。自分のマンションの規約と見比べながら読んでください。

理事長は区分所有法でいう「管理者」とされる

区分所有法の第25条第1項は、区分所有者は規約に別段の定めがない限り集会(総会)の決議で管理者を選任し、解任できると定めています。管理者とは、共用部分などの管理を法律上担う役目の人です。 標準管理規約の第38条第2項は、理事長は区分所有法に定める管理者とする、と書いています。一方、理事長の選び方は、総会の決議ではなく、理事会が理事の中から選ぶ形です(第35条第3項)。法律が「規約に別段の定めがない限り」と置いているので、規約で選び方を変えられます。 管理者に「不正な行為その他その職務を行うに適しない事情」があるときは、各区分所有者が解任を裁判所に請求できます(区分所有法第25条第2項)。

理事長の仕事は何か

区分所有法の第26条第1項によれば、管理者は共用部分などを保存し、集会の決議を実行し、規約で定めた行為をする権利を持ち、義務を負います。同条第2項により、職務については区分所有者を代理します。 標準管理規約の第38条第1項は、理事長は管理組合を代表して業務を統括するとし、規約や総会、理事会の決議で理事長の職務とされた事項を行うと定めています。つまり、理事長の仕事は「決議を実行すること」が柱です。 理事長が自分で招集する場面も決まっています。通常総会は毎年1回、新会計年度の開始から2か月以内に招集します。臨時総会は、必要と認めるときに理事会の決議を経て招集できます(第42条第3項、第4項)。理事会の招集と議長も理事長です(第52条第1項、第51条第3項)。

勝手にできないことは何か

標準管理規約では、重要な事柄ごとに、決める場所が分けられています。
  • 職員の採用と解雇は、理事会の承認が要ります(第38条第1項第二号)。
  • 規約や使用細則の変更案、長期修繕計画の作成や変更の案は、まず理事会が決議し、総会に出します(第54条第1項)。最終的に決めるのは総会です(第48条)。
  • 年度の収支予算案は、理事長が通常総会に出して承認を得ます(第58条第1項)。年度が始まってから承認までの間にやむを得ない経常的な支出が出たときは、理事会の承認を得て支出できます(同条第3項)。
  • 区分所有者への勧告や警告、訴訟などの法的措置は、理事会の決議を経て行います(第67条第1項、第3項)。
また、理事長は通常総会で前年度の業務の報告をします(第38条第3項)。さらに、決められた回数(規約で定める、○か月に1回以上)、職務の執行状況を理事会に報告します(同条第4項)。コメントには、「3か月に1回以上」といった例が書かれています。 ただし、法律上の管理者が持つ代理権に規約で制限を加えても、事情を知らない第三者には対抗できません(区分所有法第26条第3項)。理事長が内部の取り決めに反して契約しても、その制限を理由に相手方へ効力を争えない場合があります。だからこそ、権限の線引きは規約と議事録で内部に残しておく必要があります。 管理者が職務の範囲内で第三者とした行為について、区分所有者は、共用部分の持分の割合(規約で管理費用の負担割合を定めていればその割合)に応じて責任を負います(同法第29条第1項)。

病気や不在のときは誰が動くか

標準管理規約の第39条は、副理事長が理事長を補佐し、理事長に事故があるときは職務を代理し、理事長が欠けたときは職務を行う、と定めています。 また、理事長は、理事会の承認を受ければ、他の理事に職務の一部を委任できます(第38条第5項)。任せられるのは「一部」であり、理事会の承認が前提です。 役員の任期が満了しても、後任が就任するまでは引き続き職務を行います(第36条第3項)。 理事長が理事会を開かないという事態に備えた決まりもあります。理事が一定の割合以上の同意を得て招集を請求したのに、一定の日数内に通知が出ないときは、請求した理事が自分で招集できます(第52条第2項、第3項。割合と日数は規約で定める)。

理事長と管理組合の利益がぶつかるとき

標準管理規約の第38条第6項は、管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は代表権を持たず、監事または理事長以外の理事が管理組合を代表する、と定めています。 役員の取引については、第37条の2があります。役員が自分や第三者のために管理組合と取引をするとき、または管理組合が役員以外の人と、その役員と利益が相反する取引をするときは、理事会で重要な事実を開示して承認を受けなければなりません。 コメントは、この条文は、管理組合の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図ることがあってはならない、という考えに基づくと説明しています。外部の専門家が役員になれる選択肢を設けたことで、規制の必要性が高まったとも書かれています。 理事会の議決の場でも、決議について特別の利害関係を持つ理事は、議決に加われません(第53条第3項)。 この規定の例として、理事長が経営する会社に工事を発注するときや、理事長の親族の会社を管理会社の候補に入れるときが思い浮かびます。ただし、標準管理規約のコメントはこれらを具体例として挙げているわけではありません。どこまでを対象にするかは、各マンションの規約と、必要なら専門家の意見で確かめてください。

役員の誠実義務

標準管理規約の第37条第1項は、役員は法令、規約、使用細則と総会、理事会の決議に従い、組合員のために誠実に職務を行う、と定めています。区分所有法の第28条は、管理者の権利義務は法律と規約に定めがあるものを除き、委任に関する規定に従う、としています。 理事長は、好きに決めてよい立場ではなく、組合員から任されたことを、決められた手順で実行する立場です。

考えるための問い

  • 自分のマンションの規約では、理事長はどのように選ばれ、どの事柄について理事会や総会の承認が必要と書かれていますか。
  • 理事長の親族や関係する会社が管理組合と取引をするとき、事前に何を開示し、誰が承認することになっていますか。
  • 理事長が病気で動けなくなったとき、誰が職務を行うことになっていますか。規約の中で確かめられますか。

出典