法律と規約迷惑行為や規約違反に、管理組合はどう段階的に対応するか
夜中の騒音、共用廊下への私物の放置、ペットを禁じる決まりへの違反。管理費の滞納と並んで、マンションで起こりやすいのは、守るべき決まりを守らない住民への対応です。口頭で注意しても直らないとき、管理組合は何ができ、どこから先は裁判所の判断を求めることになるのでしょうか。
国土交通省の標準管理規約(令和7年10月17日改正・単棟型)と、区分所有法(令和8年4月1日施行の版)の条文を並べると、対応が軽い手段から重い手段へ段階的に組まれていることが分かります。標準管理規約はひな形であり、各マンションの規約は標準と違うことがあります。ご自分のマンションの規約で同じ内容がどう書かれているかは、管理規約の条文で確かめてください。
土台にある「共同の利益に反する行為」の禁止
区分所有法第6条第1項は、区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他、建物の管理や使用に関して区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない、と定めています。第3項は、この規定を区分所有者以外の専有部分の占有者、つまり借りて住んでいる人にも準用します。以下の措置は、すべてこの禁止に反する行為を対象にしています。第一段階:理事長の勧告、指示、警告
標準管理規約の第67条第1項は、区分所有者、その同居人、専有部分の貸与を受けた者とその同居人(以下「区分所有者等」)が、法令、規約、使用細則に違反したとき、または共同生活の秩序を乱す行為をしたときの対応を定めています。理事長は、理事会の決議を経て、その区分所有者等に、是正のため必要な勧告、指示、警告をすることができます。理事長が一人で判断するのではなく、理事会の決議が前提になっている点に注意してください。 第2項は、区分所有者に、同居人や貸与を受けた者が違反行為をした場合に、その是正のため必要な措置を講じる義務を課しています。部屋を貸している場合、入居者の行為についても所有者に是正の責任が向く書き方です。第二段階:理事長による差止めなどの訴訟
勧告で直らない場合、標準管理規約の第67条第3項が次の手段を置いています。区分所有者等が規約や使用細則に違反したとき、または区分所有者等や第三者が敷地や共用部分などで不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、差止め、排除、原状回復に必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他の法的措置を行うことができます。 第4項は、この訴えを起こすとき、違約金としての弁護士費用と差止め等の諸費用を相手方に請求できると定めます。第5項は、そうして請求した費用に相当する収納金を、第27条に定める費用に充てるとします。第6項は、理事長が原告または被告になったときに、区分所有者へ遅滞なく知らせる義務を定めます。第三段階:区分所有法第57条から第60条
法律には、さらに段階を踏んだ四つの請求が用意されています。- 第57条(停止等の請求):共同の利益に反する行為をした場合、またはそのおそれがある場合に、他の区分所有者全員または管理組合法人が、その行為の停止、結果の除去、予防に必要な措置を請求できます。訴訟を起こすには集会の決議が必要で、管理者または集会で指定された区分所有者が、決議により全員のために訴えを起こせます。占有者の行為にも準用されます。
- 第58条(使用禁止の請求):障害が著しく、第57条の請求では除去が難しいときに、集会の決議に基づき、訴えで、相当の期間、その行為をした区分所有者が専有部分を使うことの禁止を求められます。
- 第59条(競売の請求):障害が著しく、他の方法では共同生活の維持が難しいときに、集会の決議に基づき、訴えで、その区分所有者の区分所有権と敷地利用権の競売を求められます。判決が確定してから6か月を過ぎると、競売の申立てはできません。
- 第60条(占有者に対する引渡し請求):借りている人などの占有者の行為による障害が著しく、他の方法では難しいときに、集会の決議に基づき、訴えで、貸借などの契約の解除と専有部分の引渡しを求められます。
標準管理規約は法をどう受けているか
標準管理規約の第66条は、区分所有者や占有者が共同の利益に反する行為をした場合、またはそのおそれがある場合に、区分所有法第57条から第60条までの規定に基づいて必要な措置をとれる、と書いています。法律の手段を規約が受けている形です。 さらに第47条第3項第4号は、区分所有法第58条、第59条、第60条の訴えの提起を、総会の特別多数決議の対象にしています。組合員総数の過半数で議決権総数の過半数を有する組合員が出席し、出席組合員とその議決権の各4分の3以上で決めます。第11項は、決議の前に、その組合員または占有者に弁明の機会を与えるよう求めています。第48条第11号は、区分所有法第57条第2項と第47条第3項第4号の訴えを提起すべき者の選任を、総会の決議事項に挙げています。 ここで一つ、条文を並べて見えてくる点があります。規約第67条第3項は理事長の訴訟に理事会の決議を求め、区分所有法第57条第2項は、同法第57条第1項の請求に基づく訴訟に集会の決議を求めています。二つがどの訴訟に当たるのか、どう使い分けるのかについては、今回確かめた資料では説明を確認できませんでした。実際に訴えを考える場面では、各マンションの規約と、弁護士の意見で確かめる必要があります。考えるための問い
- 自分のマンションの規約には、勧告、指示、警告の定めがありますか。誰が、どんな手続(理事会の決議が要るのか)で行うと書かれていますか。
- 迷惑行為への注意について、日時、内容、相手の反応を、管理組合として記録に残す決まりはありますか。
- 部屋を貸している所有者に、入居者の行為を是正してもらう必要が出たとき、管理組合は所有者の連絡先を把握していますか。