サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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修繕と設備エレベーターの法定点検・保守契約・更新の時期をどう考えるか

エレベーターは、マンションの設備のなかで費用の大きい部類に入ります。毎月の保守費は管理費から出て、いずれ来る更新工事は修繕積立金から出ます。この記事では、法律で決まっている点検の義務、保守契約の二つの型、更新を考える時期と費用の目安を、国土交通省と横浜市の資料で確かめた範囲で整理します。契約書を読むときや、更新の話が総会に出たときに、何を確かめればよいかの手がかりになります。

法律で決まっている検査と報告

エレベーターの所有者は、建築基準法第12条にもとづいて、資格のある人に定期的に検査をさせ、結果を特定行政庁(建築の行政を担当する都道府県や市)に報告する義務があります。国土交通省の昇降機のページが、この仕組みを案内しています。 検査ができる資格者は、一級建築士、二級建築士、昇降機等検査員です(国土交通省の指針による)。 報告の周期と時期は、自治体によって違います。福島市の資料では、エレベーターなどの昇降機は毎年の報告とされ、報告を怠ったり偽ったりすると100万円以下の罰金の対象になると書かれています。ただし、これは福島市の例です。お住まいの地域の扱いは、市や県の建築指導の窓口か、保守会社に確かめてください。

保守・点検は別の話

定期検査は、法律が求める確認です。これとは別に、日常の保守・点検があります。国土交通省は2016年2月に「昇降機の適切な維持管理に関する指針」と「エレベーター保守・点検業務標準契約書」を公表しました。指針は、使用の頻度などに応じて、保守点検業者に定期的に保守・点検をさせることを、所有者の役割としています。 指針は、保守と点検を分けて定義しています。保守は清掃、注油、調整、部品や消耗品の交換などを行うこと。点検は、損傷や摩耗、異音などの有無を調べ、保守などの措置が必要かどうかを判断することです。 標準契約書(案)の記入例は、マンションの管理組合を委託者、エレベーター会社を受託者とする形で書かれています。また、指針は、所有者と管理者が別の場合には、所有者の役割を管理者が担うと読み替えると定めています。

保守契約の二つの型

国土交通省の標準契約書(案)の記入例には、契約の方式が二つ定義されています。
  • フルメンテナンス契約:定期的な保守・点検に加えて、点検の結果にもとづき、劣化した部品の取り替えや修理なども行う方式。
  • POG契約:Parts(部品)・Oil(油)・Grease(グリス)の略で、定期的な保守・点検だけを行う方式。劣化した部品の取り替えや修理は含まれません。
どちらが得かは、資料からは決められません。部品の交換や修理が契約の中に入るか、別料金になるかが違うだけです。部品交換が含まれない契約では、交換が必要になったときに別の費用がかかります。月額の比較だけでなく、その分も含めて見積書で確かめる部分です。月額の相場は、公的な資料では確認できませんでした。 指針は、契約を結ぶときに、点検の項目と頻度、部品の修理や交換の範囲、緊急時の対応などが仕様書に書かれていることを確かめるよう求めています。また、業者を選ぶときは価格だけで決めず、技術者の能力や同種のエレベーターでの実績などを合わせて見ることとしています。「安い方に替える」という判断の前に、仕様書の中身を並べて比べる必要があります。

契約の範囲を超える修理は文書で説明される

指針は、保守点検業者に対しても責任を定めています。点検の結果、契約の範囲を超える修理や機能の更新が必要だと判断したときは、その理由を文書で所有者に説明すること、というものです。理事会は、この説明を受けて、工事を頼むかどうかを判断する立場になります。 所有者の側にも役割があります。指針は、作業報告書を提出させること、過去の作業報告書や定期検査の報告書の写しなどを3年以上保存すること、所有者が変わるときは次に引き継ぐことを挙げています。役員が替わっても、資料が手元に残る形にしておくことが前提になります。

更新を考える時期

エレベーターを何年で更新すべきかを、国土交通省が一律に決めた資料は、今回の調べでは見つかりませんでした。目安を示している資料として、横浜市の住宅再生課のコラム(2026年9月更新)があります。
  • 検討の目安は、築20〜30年ごろ。2回目の大規模修繕の前後にあたる。
  • 設置から25年前後で、故障や緊急停止が増えてきたら、早めに考える。
  • メーカーから部品の製造中止の連絡が来たら、計画的な更新を考える。
  • 発注から着工まで、通常は数か月から半年以上かかる。
部品については、指針が製造業者の責任として、販売をやめたときから、そのエレベーターの耐用年数を考えた適切な期間、部品を供給することを挙げています。何年供給されるかは機種で違うので、保守会社に聞いて書面で残すのが確実です。 指針は、長期修繕計画に、エレベーターの使用頻度や劣化の状況を踏まえた事項を盛り込み、必要に応じて見直すことも求めています。更新の時期と費用は、計画に載っているかどうかが出発点になります。

更新の方式と費用の目安

横浜市のコラムは、更新の方式を三つに分けて、費用の目安を示しています。
  • 全撤去新設リニューアル:1基あたり約1,200万〜1,500万円。すべてが新しくなる。停止期間は長い。
  • 準撤去リニューアル:約700万〜1,000万円。停止期間は2〜3週間程度。出入口の枠などを残す。
  • 制御リニューアル:約400万〜700万円。停止期間は数日から1週間程度。費用は最も低いが、既存不適格(現在の基準に合っていないが、違法ではない状態)の解消にはならない。
これらは横浜市が示した目安で、機種や条件で変わります。同じコラムは、複数の会社から見積もりを取ること、工事と保守を別会社にすると故障時の責任の分担が不明確になることがある点にも触れています。 国土交通省のページには、戸開走行(かごの戸が開いたまま動く事故)をふまえて、改修やリニューアルで安全性を高めてほしいという呼びかけがあり、戸開走行保護装置の設置などへの支援制度も紹介されています。使える制度や金額は年度で変わるため、本文では触れません。管理組合として、国や自治体の窓口で最新の情報を確かめてください。 A棟の保守契約がどの型か、いつ更新の検討をするかは、管理規約や契約書、長期修繕計画のコーナーで確かめてみてください。

考えるための問い

  • 自分のマンションの保守契約は、部品の交換や修理が契約に含まれているでしょうか。含まれていない場合、修理の費用はどこから出ることになっているでしょうか。
  • 長期修繕計画には、エレベーターの更新の時期と費用が載っているでしょうか。載っているなら、方式(全撤去・準撤去・制御)は何を想定しているでしょうか。
  • 保守会社から届く作業報告書や定期検査の報告書は、理事が替わっても、すぐ見られる場所に保管されているでしょうか。

出典