サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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お金修繕積立金が足りないとき、借入れ・一時金・値上げをどう比べるか

修繕積立金が、予定していた工事費に届かないことがあります。足りない分をどう工面するかは、管理組合が総会で決める問題です。 選べる道は大きく三つあり、金融機関などから借りる方法、区分所有者から一時金を集める方法、毎月の修繕積立金を上げる方法です。 この記事では、このうち借入れについて、住宅金融支援機構(以下「機構」)の「マンション共用部分リフォーム融資」(愛称は「マンションすまい・る融資」)の条件を確かめ、三つの道を比べるときの見方を整理します。 機構の条件は、2026年10月27日に機構の公式ページで確認した内容です。年度や制度の改正で変わるため、実際に検討するときは最新の案内を機構に確かめてください。

足りないとき、管理組合に何ができるか

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月)は、修繕積立金の積み方に、均等に積む方式と、当初の額を抑えて段階的に上げる方式があると説明しています。 そのうえで、修繕のときに一時金を集めたり、金融機関から借りたりすることを前提とする積み方もある、と書いています。 同じガイドラインは、段階増額の方式や修繕時に一時金を集める方式のように、将来の負担増を前提とする積み方では、増やそうとするときに区分所有者の合意ができず、積立金が不足する事例も出ている、と注意を促しています。 足りなくなる原因は、段階増額の積み方に限りません。同じガイドラインは、工事費の高騰によって実際の修繕の周期や費用が変わるため、均等に積む方式でも増額が必要になる場合があるとしています。 どの積み方でも、5年程度ごとに長期修繕計画を見直し、それに基づいて積立金を設定し直すことが必要だという考え方です。 足りないと分かったとき、三つの道のどれを選ぶにしても、総会の決議が要ります。 国土交通省の標準管理規約(令和7年改正版)の第48条は、総会の決議事項として、「管理費等の額並びに賦課徴収方法」と、特別な管理の実施とそれに充てる「資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し」を並べています。 借入れも、値上げや一時金も、理事会だけでは決められないということです。

機構の融資はどういう仕組みか

機構のページによると、この融資の申込者は管理組合です。個人の区分所有者が借りる商品ではありません。 使い道は共用部分の工事費で、大規模修繕のほか、耐震改修、省エネ対策、バルコニーの補修なども対象です。専有部分の工事費は原則として対象外です。 借りられる額は、融資対象の工事費までで、10万円単位、最低100万円とされています。 返済期間は、原則として1年以上10年以内です。耐震改修、浸水対策、省エネ対策など所定の工事では20年以内、一部の工事で管理計画の認定を取っている場合は35年以内になります。 金利は全期間固定で、借入れを申し込む時点で返済額が決まります。金利の数字は、機構の金利情報のページで確認する必要があります。 次のいずれかに当てはまると、金利が年0.2%引き下げられます。耐震改修・浸水対策・省エネの工事を行うこと、機構の「マンションすまい・る債」を積み立てていること、マンション管理計画の認定を取っていることです。 担保は要りません。そのかわり、公益財団法人マンション管理センターか一般財団法人住宅改良開発公社の保証を受けます。保証料は管理組合が負担します。 手続は、事前相談、総会での借入決議、工事に着手する前の借入申込み、審査(約1か月)の順に進みます。工事を始めてからでは申し込めないのが原則ですから、工事の発注より前に動く必要があります。

借りられる額を決める条件

この融資では、借りたい額だけでなく、返せる額が条件になります。 毎月の返済額が、毎月集めている修繕積立金の80%以内であることが条件です。滞納の割合が10%を超え20%以内の場合は、60%以内とされています。 つまり、積立金の月額が低いままだと、借りられる額も小さくなります。積立金が足りないから借りたいのに、その積立金の額が借入れの上限を決めるという関係です。ここから、借りる場合でも、返済を見込んで積立金を上げる話が一緒に出てくることが多いと考えられます。 実際、機構が求める総会決議には、機構からの借入れ、返済に修繕積立金を充てること、保証の委託に加えて、一時金を集める場合はその徴収、修繕積立金を上げる場合はその増額も含まれています。借入れだけで話が終わるとは限りません。 標準管理規約の第28条第3項も、借入れをしたときは修繕積立金で返済に充てられると定めています。 このほか、機構のページには、管理費と修繕積立金を分けて経理していること、1年以上定期的に積み立てていること、管理者や会計担当の理事が区分所有者の個人から選ばれていることなどの条件があります。 長期修繕計画について、条件のページに具体的な要件は書かれていません。ただし、審査で返済に懸念があれば、断られたり減額されたりすることがあると明記されています。

借入れ・一時金・値上げをどう比べるか

三つの道は、負担を誰がいつ引き受けるかが違います。
  • 借入れ:工事のときの一度に大きな支出を避け、返済期間にわたって負担をならせます。一方で、保証料と利息の分、総額は増えます。返済期間中は、積立金の一部が返済に回ります。
  • 一時金:利息は払わずに済みます。ただし、国土交通省のガイドラインは、多額の費用を工事のときに一括で集めると、区分所有者にとって大きな負担になり、合意形成が難しく、場合によっては必要な工事ができないことにもなりかねないと述べています。標準管理規約は、一時金を「臨時に要する費用として特別に徴収する」場合として扱っています(第60条)。
  • 積立金の値上げ:工事後も積立金が増えた状態が続くので、次の修繕にも備えられます。一方、値上げの合意が得られなければ、不足は解消しません。ガイドラインが指摘する、増額の合意ができず不足する事例は、この道の難しさを示しています。
どれが望ましいかは、管理組合の事情で変わります。借入れは、一時金を出せない人が多いときや、工事を先送りできないときに現実的な選択肢になります。 実際には、借入れと値上げ、借入れと一時金のように、組み合わせて決める例が考えられます。機構の総会決議の項目が三つを並べていることも、組み合わせを前提にした仕組みであることを示しています。

検討するときに確かめること

借入れを検討する管理組合は、機構への事前相談の前に、いくつかの数字をそろえておく必要があります。 工事費の見積り、現在の積立金の月額と残高、滞納の割合、そして返済額が積立金の80%以内に収まるかどうかです。 説明資料を総会の議案書に添えて区分所有者に説明し、議事録にも残すことが、機構の条件に挙がっています。 自治体によっては、融資に関する利子補給や保証料の助成を設けているところがあります。 今回、機構や国土交通省の資料では個別の自治体の制度を確かめていないため、お住まいの市に制度があるかは、市の窓口で確認してください。

考えるための問い

  • 長期修繕計画の資金計画は、直近の工事費の見積りに合っているでしょうか。合っていないとき、不足が出る時期はいつ頃と見込まれるでしょうか。
  • 一時金を集める場合、一度に出すのが難しい人はどのくらいいるでしょうか。借入れを選ぶと、その人たちの負担はどう変わるでしょうか。
  • 借入れの返済は、積立金の月額の範囲に収める必要があります。今の積立金の額で、どのくらいの借入れなら返せるでしょうか。A棟の管理規約や長期修繕計画がどうなっているかは、管理規約のコーナーで確かめてみてください。

出典