運営総会に出られない人の議決権行使とWEB併用総会の決まり
総会の日に都合がつかない組合員は、どの管理組合にもいます。そのとき議決権を手放さずに済む方法が、書面、代理人、電磁的方法の三つです。会場に集まる形とWEB会議を併用する総会という選択肢もあります。この記事は、区分所有法と国土交通省の標準管理規約が、これらをどう定めているかを整理します。自分のマンションの総会案内や委任状の様式を読むときの手がかりになります。
条文は、e-Govの法令検索で開いた「建物の区分所有等に関する法律」を使います。開いた版は、令和7年の改正法が令和8年4月1日に施行された後のもので、令和8年10月26日時点で施行されている条文です。標準管理規約は、国土交通省が令和7年10月17日に改正したものの単棟型(本文とコメント)を使います。標準管理規約はひな形であり、個々のマンションを縛るのは各管理組合の規約です。
法律が認めている三つの方法
区分所有法第39条第2項は、議決権を書面または代理人によって行使できると定めています。書面または代理人で議決権を行使した人は、出席した人の数と議決権の数に算入されます。総会に来なくても、決議の成立を判断する数には入るということです。 同じ条の第3項は、書面による行使に代えて、電磁的方法で議決権を行使できると定めています。電磁的方法とは、電子メールや専用の投票画面など、電子的な手段のことです。ただし、これを使うには規約の定めか総会の決議が要ります。第3項は、電磁的方法による行使を書面による行使とみなして、第2項の算入の扱いを当てはめるとしています。 区分所有法の第39条は、第1項で、集会の議事は法律か規約に別段の定めがなければ出席者の過半数で決めるとしています。この「出席者」には、書面などで議決権を行使した人も含まれます。議決権行使書と委任状は性質が違う
標準管理規約第46条のコメントは、書面による行使と代理人による行使を分けて説明しています。書面とは、総会に出ずに、議案ごとの賛否を記入した書面(議決権行使書)を事前に出す方法です。代理人による行使とは、委任状で授権を受けた代理人が総会に出席して議決権を行使する方法です。 どちらも本人が出席しない点は同じです。違いは、賛否を誰が決めるかにあります。議決権行使書では本人が賛否を決め、委任状では賛否の判断を代理人に預けます。コメントは、やむを得ず欠席する場合でも、本人の意思を直接反映させるために、議決権行使書で自分で賛否を示すことが望ましいとしています。そのためには、招集の通知で議案の内容がなるべく明確に示されている必要がある、とも述べています。代理人は誰でもよいわけではない
標準管理規約第46条第5項は、代理人になれる人を、組合員の配偶者または一親等の親族、同居の親族、他の組合員、国内管理人に限る例を示しています。コメントは、総会が管理組合の最高の意思決定機関であることから、代理人は区分所有者と利害が一致すると考えられる人に限るのが望ましいとしています。成年後見人など法定代理人は、当然に代理行使できる範囲に入るとも書かれています。 また、第6項は、代理人が議決権を行使するとき、代理権を証する書面を理事長に出すことを求めています。電磁的方法が利用できる場合の例では、この書面を電磁的方法で出すこともできます(第9項)。 実務で揉めやすいのが、代理人の名前が空欄の「白紙委任状」です。コメントは、効力や扱いをめぐってトラブルになりうると指摘しています。対策の例として、委任状の様式に、代理人を自分で決める必要があること、適当な人がいなければ空欄にせず議決権行使書で自分の賛否を示すことを書いておく方法が挙げられています。電磁的方法による議決権行使
標準管理規約は、電磁的方法が利用できるかどうかで条文を二通り示しています。利用できる場合の例では、第46条第8項が、議決権の行使を書面に代えて電磁的方法でできると定め、第47条第7項が、電磁的方法で行使した人も出席者に算入すると定めています。利用できない管理組合では、これらの規定を置かないことになります。 したがって、自分のマンションで電磁的方法による議決権行使ができるかどうかは、規約にその定めがあるか、総会で決議したかを確かめなければ分かりません。WEB会議を併用する総会
標準管理規約の第43条第1項は、WEB会議システム等で開く場合、招集通知に開催方法を記すよう定めています。コメントは、開催方法としてアクセス用のURLが考えられること、なりすまし防止のために出席予定の組合員へ個別にIDとパスワードを送ることが考えられることを挙げています。 第47条第1項は、総会の成立に必要な出席の数え方で、WEB会議システム等を用いて開く会議も含めると明記しています。コメントによれば、議決権を行使できる組合員がWEBで出席した場合は出席組合員に数えられます。他方、議決権を行使できない傍聴人としてWEBで見ているだけの組合員は、数えられないと考えられます。 もう一つの論点は、WEBで出席した人の議決権行使に、区分所有法第39条第3項の規約の定めや決議が要るかどうかです。標準管理規約第46条のコメントは、WEBで出席した組合員の議決権行使は、会場に出席した場合と同じ扱いであり、その定めや決議は不要としています。一方で、第三者が組合員になりすました場合や、サイバー攻撃、大規模障害で通信が使えなくなった場合には、総会の決議が無効となるおそれがあるという課題に注意が必要だとも述べています。 開いた区分所有法の第35条から第45条には、WEB出席そのものを定めた独立の規定を見つけられませんでした。WEB出席の扱いは、標準管理規約のコメントの考え方に拠っています。裁判所の判断などは確認できていません。定足数と書面決議の関係
標準管理規約第47条第1項の総会成立の定足数は、令和7年の改正で、議決権総数の半数以上から過半数に改められました。コメントは、小規模なマンションでは改正前と同じ半数以上とすることも考えられるとしています。特別多数決議の事項が含まれる総会では、組合員総数の過半数の出席も確かめる必要があります。この点は、総会の決め方の改正を扱った記事に譲ります。 総会を開かず、全員の承諾で書面または電磁的方法により決議する方法もあります。区分所有法第45条は、区分所有者全員の承諾があるときにこれを認めています。一人でも承諾しなければ使えない点で、欠席者の議決権行使とは別の制度です。考えるための問い
- 自分のマンションの規約は、代理人になれる人の範囲を決めているでしょうか。委任状と議決権行使書の様式は、本人が賛否を自分で決められる作りになっているでしょうか。
- 電磁的方法による議決権行使やWEB併用の総会を取り入れるとき、なりすましや通信障害が起きた場合の備えをどう決めておくでしょうか。
- 高齢の組合員が機器に不慣れでも議決権を行使できるよう、書面の方法をどう残しておくでしょうか。