サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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暮らしとトラブルマンションの生活騒音、規約が決めることと理事会ができること

階下から足音が響く、夜に楽器の音が聞こえる、夜間の洗濯機や話し声が気になる。こうした生活騒音は、窓や壁越しに聞こえる音の大きさを誰かが数値で決めてくれるわけではないため、当事者だけで抱え込みやすい問題です。この記事では、国土交通省の標準管理規約(令和7年改正の単棟型)と区分所有法の条文を確かめながら、規約が住戸の使い方についてどこまで定めているか、理事会が動ける範囲はどこまでか、当事者の話し合いをどう進めるかを整理します。自分が音の出し手になる場合にも、受け手になる場合にも、あらかじめ全体像を知っておくと、感情的にこじれる前に動けます。

規約は住戸の使い方をどこまで定めているか

標準管理規約の第12条は、区分所有者が専有部分(各住戸の中の部分)を専ら住宅として使い、ほかの用途には使わないと定めています。住宅としての使用であれば、住戸内での暮らしの音そのものを、この条文が直接禁じているわけではありません。 私が確かめた範囲では、用法の章(第12条から第19条)に、足音や話し声の大きさ、楽器を弾ける時間帯を定めた条文は見当たりませんでした。条文全体を通読して確認したわけではないため、ほかの章にないと言い切ることはできません。 その代わりに、第18条が「使用細則」を別に定めるとしています。使用細則とは、規約を補って日常の使い方の細かな決まりを書いたものです。国土交通省のコメントは、使用細則で定めることが考えられる事項の例として、動物の飼育やピアノ等の演奏に関する事項など、専有部分の使用方法の規制を挙げています。ただし、専有部分の使用に関する事項のうち基本的なものは、規約で定めるべき事項だとも書かれています。楽器の時間帯制限のような決まりを置くかどうかは、各マンションの規約と細則が決めることです。 共用部分については第13条があり、敷地や共用部分を通常の用法に従って使うことを求めています。廊下で大声を出す、共用部分に物を置いて音が出る、といった場面はこの条文に関わります。具体的な内容は使用細則で定めるとコメントに書かれています。

床の工事と音の関わり

足音の苦情は、床をフローリングに替えたあとに出ることがよくあります。標準管理規約の第17条は、専有部分の修繕、模様替え、建物に定着する物の取付けや取替えのうち、共用部分や他の専有部分に影響を与えるおそれのあるものを、あらかじめ理事長に申請し、承認を受けてから行うと定めています。承認か不承認かは理事会の決議で決めます。 コメントでは、承認の判断にあたって工事の躯体への影響、防火、防音などの影響を考慮するとされています。フローリング工事については、構造、工事の仕様、材料などで影響が違うため、専門家への確認が必要だと書かれています。音を出さない工夫は、住み始めてからの注意だけでなく、工事の申請の段階で始まっています。 また第17条第7項は、承認が要らない修繕等でも、工事中の騒音、振動、臭気などが共用部分や他の専有部分に及ぶことを管理組合が事前に把握する必要があるものは、あらかじめ理事長に届け出るとしています。これは工事中の音の規定で、日常の生活音とは別の話です。

管理組合と理事会にできること

第32条は管理組合の業務を並べており、その十二号に、マンションと周辺の風紀、秩序、安全の維持や、居住環境の維持と向上に関する業務があります。生活騒音の相談を受けて注意喚起をすることは、この業務に結びつけて考えられます。ただし、この条文は業務の範囲を示すだけで、特定の住戸に何かを強制する権限を与えるものではありません。 強制力に近いものは、第67条にあります。区分所有者本人だけでなく、同居人や、住戸を借りている人も含めて、法令、規約、使用細則に違反したとき、または共同生活の秩序を乱す行為をしたとき、理事長は理事会の決議を経て、是正のための勧告、指示、警告を行うことができます。区分所有者は、同居人や借主がその行為をしたときに、是正のために必要な措置をとらなければなりません。 さらに、規約や細則に違反した場合などには、理事長が理事会の決議を経て、管理組合を代表して訴訟などの法的な措置をとることもできます。もっとも、足音や生活音がこの「共同生活の秩序を乱す行為」にどの程度当たるかは、音の大きさ、時間帯、続く期間などで変わるはずです。この判断基準を示した公的な資料は、今回確認できませんでした。 できないことも押さえておきます。第17条第5項の住戸への立入りは、承認した工事の施行に必要な範囲の調査を想定した規定で、騒音を調べるために住戸へ入る根拠にはなりません。また、条文は理事会に音の大小を裁定する役割を与えていません。理事会の役割は、事情を聞き、注意を伝え、当事者が話し合う場を整えるところまでと考えるのが無理のない読み方です。

区分所有法が用意している手段

区分所有法の第6条第1項は、区分所有者が建物の管理や使用について、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならないと定め、第3項はこれを専有部分の占有者(借りている人など)にも準用します。第57条は、この行為をした場合やするおそれがある場合に、ほかの区分所有者の全員または管理組合法人が、行為の停止、結果の除去、予防のための措置を請求できるとしています。訴訟を起こすには集会(総会)の決議が要ります。 行為による共同生活上の障害が著しく、第57条の請求では除去が難しいときの最後の手段として、第58条が一定期間の専有部分の使用禁止を請求する訴えを定めています。決議には、出席した区分所有者と議決権のそれぞれ4分の3以上の賛成が必要で、あらかじめ当該区分所有者に弁明の機会を与えなければなりません。ここで引いた条文は、令和8年4月1日に施行された改正後のものを、e-Gov法令検索で確認しました。 日常の生活音がこの手段の対象になるのは、よほど深刻な場合に限られると思われます。裁判所が生活騒音をどの程度から共同の利益に反するとみるのかは、今回の調査では公的な資料で確かめられませんでした。

当事者の話し合いをどう進めるか

大阪府のページは、生活騒音を条例などで規制しておらず、当事者同士の話し合いで解決することが望まれると説明しています。足音にはマットを敷く、ドアを静かに閉める、楽器は時間帯を考え窓を閉めるといった、出し手の側でできる工夫も挙げています。 話し合いの手順そのものを定めた公的な資料は、今回は見つけられませんでした。そのうえで、考え方の一例を挙げます。まず、いつ、どの部屋の方向から、どんな音が、どのくらい続いたかを、自分用に書き留めておきます。次に、相手を責める調子を避けて、困っている事実を伝えます。直接話すのが難しければ、理事会や管理会社に間に入ってもらうことを相談します。出し手のほうも、自分の暮らしの音が相手にどう届くかは分かりにくいため、まず聞く姿勢をとるほうが話が進みやすいでしょう。

それでも解決しないとき

大阪府のページは、当事者同士で解決が難しい場合の相談先として、市町村の無料法律相談、弁護士会の法律相談、法テラス、裁判所の民事調停などを挙げています。 裁判所の説明によると、民事調停は、裁判官と調停委員が間に入って話し合いによる合意を目指す手続で、騒音や悪臭などの近隣の問題では専門家の調停委員が関わることがあります。申立ては原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に行い、手続は非公開です。通常は2、3回の期日で、おおむね3か月以内に終わることが多いとされています。合意が成立すると、調停調書が作られ、確定判決と同じ効力を持ちます。

考えるための問い

  • 自分のマンションの規約と使用細則には、楽器の演奏や夜間の音について、どのような定めがあるでしょうか。定めがない場合、誰が、どの場で決めるのがよいでしょうか。
  • 生活騒音の相談が理事会に寄せられたとき、理事会はどこまで関わり、どこから当事者に任せるのかを、あらかじめ決めておくことができるでしょうか。
  • 床の工事の申請を受けたとき、防音について誰に確認し、何を承認の条件にするのが適切でしょうか。

出典