暮らしとトラブル専有部分のリフォーム、管理組合への申請と承認の流れ
自分の住戸の床を張り替えたい、浴室を新しくしたい。こうした工事は自分のお金で自分の部屋に行うものですが、マンションでは管理組合への手続きが要る場合があります。床の工事は下の階に音が伝わりやすく、浴室や台所の配管は建物全体で使う配管につながっているからです。国土交通省の「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年10月17日改正)の第17条と、そのコメント(国の考え方を条文ごとに書いた解説)をもとに、何を届け出て、誰がどう承認するのかを並べます。工事を頼む前に手順を知っておけば、着工の直前に止められたり、近所ともめたりする心配を減らせます。理事として申請を受ける側に回ったときの判断の手がかりにもなります。
承認が要る工事と、届出だけでよい工事
標準管理規約の第17条は、専有部分の工事を次の三つに分けて扱っています。- 承認が要る工事:修繕、模様替え、設備の取付けや取替えのうち、共用部分やほかの住戸に影響を与えるおそれのあるもの(第1項)
- 届出が要る工事:承認は要らないものの、工事業者の出入り、資材の運び込み、騒音、振動、においなどで工事中に共用部分やほかの住戸へ影響が出るため、管理組合が前もって知っておく必要があるもの(第7項)
- どちらも要らない工事:電球、水道のパッキン、シャワーヘッド、温水洗浄便座の取替えのように、ほかの区分所有者に直接にも間接にも影響しないもの(別添2の例)
申請から承認までの流れ
承認が要る工事をするときは、工事の前に理事長へ申請します(第1項)。申請書には設計図、仕様書、工程表を付けます(第2項)。コメントが示す申請書の書式には、対象の住戸、工事の内容、工事の期間、施工業者を書く欄があります。 申請を受けるのは理事長ですが、承認するかどうかを決めるのは理事会の決議です(第3項、第54条第1項第5号)。承認は書面か電磁的方法(電子メールなど)で受けることになっています。申請の数が多く、早く審査する必要があることから、第53条第2項は、理事の過半数が承諾すれば、集まらずに書面などで決議できるようにしています。承認書の書式には「条件」の欄があり、条件を付けて承認することも想定されています。 承認されると、その範囲内であれば、工事にかかわる共用部分の工事も区分所有者が行えます(第4項)。コメントは、共用部分の中にある配管や配線の枝分かれした部分の工事を例に挙げています。ただし、区分所有法の共用部分の変更に当たり、総会の決議が必要になる場合もあると、コメントは注意を促しています。理事会は何を見て判断するのか
コメントによると、理事会は、躯体(建物の骨組み)への影響、防火や防音への影響、強度の計算上の問題、ほかの住戸への影響などを考えて判断します。専門的な判断が要るときは、建築士や建築設備の専門家の意見を聴くことも考えるよう書いています。調査に特別な費用がかかる場合は、申請者に負担させるのが適当としています。 床の張替えについて、別添2は承認の条件を、新築時と同じかそれ以上の遮音性能があることの確認としています。コメントは、フローリング工事は構造や工事の仕様、材料で影響が変わるので、専門家に確かめる必要があるとしています。別添2の注は定め方の例を二つ挙げています。新築時からフローリングの建物なら、遮音等級が新築時と同等以上で、施工がカタログどおりかを確かめる方法です。新築時はカーペット敷きでスラブ(床のコンクリートの板)が薄い古い建物なら、管理組合が遮音等級の基準を示す方法です。 一方で、厳しくしすぎないようにという注意もあります。コメントは、建物が古くなるほど専有部分の修繕が必要になることを踏まえ、過度な規制にならないよう求めています。工事が上下左右の住戸に著しい影響を与えるおそれがあるときは、その住戸の人の同意を求めることも考えられるとしています。建替えなどの検討が近く始まりそうなマンションでは、高額な工事を申請してきた人にその可能性を伝えるのが望ましく、それでも工事をするかどうかは本人が決めることだと書いています。工事中の配慮と工事後の責任
工事中の影響について、コメントは、届出に加えて工事の内容などを掲示し、ほかの住人に知らせるのが適当だとしています。別添2の表も、業者が出入りする工事は工事の時間と内容、業者名を管理組合に届け、騒音や振動が出る工事は工事の期間と内容を掲示する、としています。業者の出入りを管理組合がつかめるうえ、思いがけない影響が出たときに、どの住戸の工事が原因かを確かめられるようにするためです。 理事長か理事長が指定した人は、必要な範囲で工事の箇所に立ち入って調べることができ、区分所有者は正当な理由がなければ断れません(第5項)。コメントは、工事中に理事や技術者が立ち会う方法のほか、それが難しければ抜き打ちで検査すると知らせておく、業者に写真を撮らせて報告させる、といった方法を挙げています。 承認を受けた工事でも、あとで共用部分やほかの住戸に影響が出たら、工事を頼んだ区分所有者が責任と費用を負って対処します(第6項)。コメントは、承認によってこの責任が免除されるわけではないことを確かめる規定だと説明し、業者との契約書に、あとで影響が出たときの責任の所在と補償を書いておくのが適切としています。承認を受けずに工事をしたら
承認を受けずに工事をした場合について、コメントは第67条を挙げています。理事長は理事会の決議を経て、是正のための勧告や指示、警告を行えます(第67条第1項)。規約違反に対しては、差止めや原状回復などを求めて、管理組合を代表して訴訟などの法的措置をとることもできます(同条第3項)。立入りの結果、申請や届出と違う工事が見つかった場合も同じだと、コメントは書いています。 具体的な手続きや守る事項は、使用細則に別に定めることになっています(コメント第17条関係⑭)。申請の締切や工事の時間帯などはマンションごとに違う可能性があり、標準管理規約はそのひな形にすぎません。A棟の規約や細則ではどうなっているか、管理規約のコーナーで確かめてみてください。考えるための問い
- 自分のマンションの規約や使用細則に、リフォームの申請書の出し方や、届出だけでよい工事の範囲は書かれていますか。
- 床をフローリングに張り替える申請が出たとき、理事会は遮音性能を何で確かめますか。専門家に頼む費用を誰が負担するかは決まっていますか。
- 工事の掲示や近所へのお知らせを、誰がいつまでに行う決まりにすれば、住む人どうしの行き違いを減らせるでしょうか。