サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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法律と規約区分所有法改正で建替えや一括売却の決め方はどう変わったか

古くなったマンションをどうするかは、これまで「修繕を重ねて使い続けるか、建て替えるか」の二つで語られることがほとんどでした。令和8年(2026年)4月1日に施行された改正区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)で、この選択肢が増えました。建物と敷地をまとめて売る、骨組みを残して建物全体を造り直す、取り壊すといった方法を、建替えと同じ多数決で選べるようになったのです。どの方法でも、決議が成り立てば反対した人も住戸を手放すことになりうるので、組合員一人ひとりの財産と住まいに直接かかわります。総会の普通決議や特別決議の変わり方、連絡のつかない持ち主の扱いは、別の記事「令和8年施行の区分所有法改正で総会の決め方はどう変わったか」にまとめてあります。

建替え決議の要件は原則5分の4のまま

改正後の区分所有法第62条第1項は、建替え決議に区分所有者と議決権の各5分の4以上の賛成が要ると定めています。数字は改正前と同じです。修繕などの決議は改正で出席者の多数決に変わりましたが、法務省の説明資料は、建替え決議のように区分所有権の処分を伴う決議をその対象から外しています。つまり母数は総会の出席者ではなく、区分所有者全体です。ただし、裁判所が所在等不明と認めた区分所有者は、建替え決議でも母数から除かれます。

建物に一定の事情があれば4分の3に下がる

改正で新しく設けられたのは、第62条第2項の緩和です。建物が次のどれかに当てはまる場合、必要な賛成は5分の4から4分の3に下がります。
  • 地震に対する安全性の基準に適合していない
  • 火災に対する安全性の基準に適合していない
  • 外壁や外装材などがはがれ落ちて、周りに危害を与えるおそれがある
  • 給水や排水などの配管が傷んで、衛生上ひどく有害になるおそれがある
  • 高齢者や障害のある人が移動しやすい建物の基準に適合していない
細かい基準は、法務大臣が国土交通大臣と協議して定めます(同条第3項)。法務省の資料によれば、基準は法務省令と告示で示され、その中身は、マンション再生法(後で説明します)にもとづく「要除却等認定」の基準(同法第163条の56)と同じです。議決権が均等な100戸のマンションでいえば、80戸の賛成が要るところが、75戸で足りる計算になります(説明のための例です)。

建替え以外に四つの決議が加わった

改正前は、建物と敷地をまとめて売ることや、取り壊すことには、区分所有者全員の同意が必要でした。法務省の資料は、これが事実上困難だったと説明しています。骨組みを残して建物全体を改修する「一棟リノベーション」も、技術的にはできるのに全員の同意が要るために進みませんでした。改正後は、次の四つが建替えと同じ多数決で決められます。
  • 建物更新決議(第64条の5):建物の骨組み(構造上主要な部分)を保つために共用部分の形を変え、それに合わせて全ての住戸の形や面積、位置関係を変える。一棟リノベーションにあたります
  • 建物敷地売却決議(第64条の6):建物と敷地をまとめて売る
  • 建物取壊し敷地売却決議(第64条の7):建物を取り壊したうえで敷地を売る
  • 取壊し決議(第64条の8):建物を取り壊す
どれも原則は5分の4です。四つの条文はそれぞれ第62条の大半を準用している(読み替えて当てはめる)ので、第2項の4分の3への緩和もそのまま使えます。売却を伴う二つの決議では、区分所有者と議決権に加えて、敷地の権利の持分の価格でも5分の4以上の賛成が要ります。

決議の前に組合員に示されること

建替え決議では、新しい建物の設計の概要、取壊しと建築にかかる費用の見込み、その分担、新しい建物の住戸を誰が持つかを決めなければなりません(第62条第4項)。売却の決議なら、売る相手の名前、代金の見込み、各区分所有者が受け取る金額の計算方法を定めます。 手順にも決まりがあります。建替え決議の総会の招集通知は、会日の2か月以上前に出します(第62条第6項)。通知には、建て替える理由、建て替えずに建物を使い続ける場合の費用とその内訳、修繕計画の内容、積み立てている修繕積立金の額を書きます(同条第7項)。さらに会日の1か月前までに説明会を開かなければなりません(同条第8項)。この手順は準用によって、新しい四つの決議にもかかります。修繕を続けた場合と比べたうえで判断できるようにする仕組みです。

反対した人と住戸を借りている人はどうなるか

決議に賛成しなかった区分所有者には、参加するかどうかを書面で尋ねます。2か月以内に答えなければ参加しないとみなされ、その後、賛成した側はその人に住戸と敷地の権利を時価で売り渡すよう請求できます(第63条)。この仕組みも四つの決議に準用されます。 改正で新しく加わったのは、住戸を借りている人の扱いです。法務省の資料によれば、改正前は建替え決議があっても、借りている人が同意しない限り賃貸借は終わらず、工事の妨げになっていました。改正後の第64条の2では、賛成した区分所有者などが借り手に賃貸借の終了を請求でき、請求から6か月で賃貸借は終わります。その代わり、貸している区分所有者は、終了によって借り手にふつう生じる損失の補償金を払わなければなりません。借り手は補償金を受け取るまで明け渡しを拒めます。無償で貸している場合や配偶者居住権にも、同じ仕組みが用意されました(第64条の3、第64条の4)。

マンション建替円滑化法も「再生法」に変わった

決議のあとの事業の進め方を定める「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」は、同じ日に「マンションの再生等の円滑化に関する法律」へ名前が変わりました。国土交通省によれば、建物更新決議などに対応する再生事業、売却の決議に対応する売却事業、取壊し決議に対応する除却事業の手続が整えられ、建替えなどの権利変換(元の住戸の権利を新しい建物の権利に置き換える手続)の対象に、隣接地や底地の権利も加わりました。 要除却等認定を受けたマンションの建替えや更新では、これまでの容積率の緩和に加えて、特定行政庁(建築確認などを受け持つ自治体)の許可で高さ制限も緩められるようになりました(第163条の59)。資金の面では、住宅金融支援機構がマンションの更新などに必要なお金を貸す制度もできています。改正法の概要資料は、令和6(R6)時点で472件だったマンションの再生等の件数を、1,000件に増やす目標を掲げています。 A棟の規約や長期修繕計画で、建物の将来がどう扱われているかは、管理規約のコーナーで確かめてみてください。

考えるための問い

  • 自分のマンションは、耐震診断や配管の調査の結果から見て、4分の3に下がる五つの事情のどれかに当てはまるでしょうか。
  • 修繕を続ける、一棟リノベーションをする、建て替える、売却する、のどれが合うかを、築何年ごろから話し合い始めるのがよいでしょうか。
  • 住戸を人に貸している組合員がいる場合、決議のあとで生じる補償金の負担を、前もってどう考えておけばよいでしょうか。

出典