サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

← 一覧に戻る

お金修繕積立金を国の目安額と比べるときの計算と注意点

修繕積立金の額が足りているかどうかは、総会に値上げの議案が出たときや、長期修繕計画を見直すときに問われます。国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」は、その判断の手がかりとして、専有床面積1㎡あたりの月額の目安を示しています。いまの版は令和6年6月7日の改定です。ただし、毎月払っている額をそのまま目安の表に当てはめても、ガイドラインのいう比べ方にはなりません。ガイドラインの原文をもとに、目安額の区分、計算の手順、機械式駐車場の加算、目安から外れたときの読み方、段階増額の引き上げ幅の考え方を並べます。手元に長期修繕計画があれば、自分のマンションで同じ計算ができます。

ガイドラインの版と目安の成り立ち

ガイドラインは平成23年4月に作られ、令和3年9月の改訂で、新築を買う人だけでなく既存マンションの区分所有者や管理組合も目安を参照できる形になりました。令和6年6月の改定では、積立方法の章に段階増額積立方式の引き上げの考え方が加わり、長期修繕計画を見直す理由に「工事費の高騰」が書き足されました。この改定の新旧対照表に載っている変更は積立方法の章だけで、目安額の章は入っていません。 目安は、長期修繕計画作成ガイドラインにおおむね沿って作られた366事例の長期修繕計画から出しています。対象は主に区分所有者が自分で住む住居専用のマンションで、計画期間が新築で30年以上、既存で25年以上あり、2013年9月以降に総会などで承認された計画です。事例のばらつきが大きいため、平均値と、上下それぞれ6分の1を除いた「事例の3分の2が包含される幅」が並べて示されています。

階数と延床面積で分かれる目安額

目安は地上20階を境に分かれ、20階未満はさらに建築延床面積(建物の各階の床面積の合計)で4つに区分されています。機械式駐車場の分を除いた、専有床面積1㎡あたりの月額は次のとおりです。
  • 20階未満、5,000㎡未満:平均335円(幅235円~430円)
  • 20階未満、5,000㎡以上10,000㎡未満:平均252円(幅170円~320円)
  • 20階未満、10,000㎡以上20,000㎡未満:平均271円(幅200円~330円)
  • 20階未満、20,000㎡以上:平均255円(幅190円~325円)
  • 20階以上:平均338円(幅240円~410円)
20階以上を分けた理由について、ガイドラインは、外壁の修繕に特殊な足場が要り、共用部分の割合も高くなるため、工事費が増えやすいと説明しています。20階未満を延床面積で区分したのは、規模によって工事費の水準に違いが見られるためです。

毎月の額ではなく、計画期間全体の平均で比べる

目安と比べる数字は、いま払っている月額ではありません。ガイドラインは、長期修繕計画の期間全体で積み立てるお金を、総専有床面積と期間の月数で割った平均額を求めるよう示しています。
  • 平均額(円/㎡・月)=(計画当初の積立金の残高+計画期間に集める積立金の総額+専用使用料などからの繰入額の総額)÷総専有床面積÷計画期間の月数
3つの金額は、どれも長期修繕計画に書かれています。総専有床面積は、1戸あたりの専有面積が分かっていれば戸数を掛けて出せます。 ガイドラインのモデルケース(地上10階、延床7,000㎡、総専有床面積4,900㎡、計画期間30年)では、残高7,000万円、集める総額2億6,460万円、駐車場使用料などの繰入9,000万円を足した4億2,460万円を、4,900㎡と360か月で割って、約241円になります。このモデルで毎月集める積立金は1㎡あたり150円ですが、目安と比べるのは241円のほうです。段階増額積立方式(はじめは安く、数年ごとに上げていく積み立て方)のマンションでは、いまの月額が計画の後半より低いので、いまの月額だけを表に当てはめると足りないように見えやすくなります。逆に、計画に書かれた値上げが総会で決まらなければ、平均額は計画どおりには集まりません。 繰入額の見込み方にも決まりがあります。ガイドラインは、実際に専用使用料などとして集めている額を超えて繰入額を見込まないこと、特に駐車場使用料は稼働率で大きく変わることに注意を促しています。繰入額を大きく見込むほど平均額は高く出るので、計算の前に、計画の繰入額といまの使用料収入を見比べておくと、数字を過大に読まずにすみます。

機械式駐車場があるときの加算

機械式駐車場は修繕工事に多額の費用がかかるため、目安とは別に加算します。加算額は、機種ごとの1台あたり月額の修繕工事費に台数を掛け、総専有床面積で割って求めます。1台あたりの額は117事例から出したもので、2段(ピット1段)昇降式6,450円、3段(ピット2段)昇降式5,840円、3段(ピット1段)昇降横行式7,210円、4段(ピット2段)昇降横行式6,235円、エレベーター方式と垂直循環方式4,645円、その他5,235円です。屋外か屋内か、地上か地下かで個別の差が大きいという注意書きもついています。 モデルケースには3段(ピット2段)昇降式が30台あり、5,840円×30台÷4,900㎡で約36円になります。目安は平均252円に36円を足して288円、幅は206円~356円となり、241円はこの幅に入ります。駐車場の維持管理や修繕の費用を管理費や修繕積立金と分けて経理するなど、使用料収入でまかなうことにしている場合は、この加算は要らないとされています。加算しないなら、平均額の計算でも駐車場の分を繰入額に含めていないかを確かめておくと、比べる数字の前提がそろいます。

目安から外れていたら、どう読むか

ガイドラインは、積立金の額が目安の幅に収まっていないからといって、ただちに不適切と判断されるわけではないと書いています。目安は建物の規模以外の要因を考えに入れていないためです。変動要因としては、複雑な形や超高層の建物、エレベーターや機械式駐車場の有無と設置場所、充実した共用施設、海に近く塩害を受ける立地や寒冷地、地域による労務費の差、仕上げ材や設備の仕様などが挙げられています。外れていたときは、長期修繕計画の内容、積立金の決め方、積立方法を確かめるよう求めています。 一方で、幅の下限には制度上の意味もあります。ガイドラインによると、管理計画認定(マンション管理適正化法に基づいて、自治体が管理組合の管理計画を認定する制度)を受けたマンションの固定資産税を減らす「マンション長寿命化促進税制」では、令和3年9月1日以降に、計画期間全体の平均額を下限値(機械式駐車場があれば加算後の額)を下回る額から上回る額へ引き上げたことが要件の一つです。引き上げたことの証明書が要るなど、ほかにも要件があります。

段階増額の引き上げ幅の考え方

令和6年の改定で加わったのは、段階増額積立方式の引き上げ幅の考え方です。均等積立方式にした場合の月額(計画期間全体の平均額)を基準額とし、計画のはじめの額は基準額の0.6倍以上、最後の額は1.1倍以内にする、としています。基準額が1㎡あたり250円なら、はじめは150円以上、最後は275円以内という計算です。ガイドラインは、将来の負担増を前提とする方式では値上げの合意ができず積立金が不足する例があること、区分所有者の高齢化で負担が難しくなることを挙げ、早めに引き上げを終えるのが望ましいとしています。 ただし、この考え方には、工事費の高騰などを受けて計画を見直すとき、いまの積立金を大きく引き上げることを制限するものではない、という留意事項がついています。0.6倍と1.1倍の枠は、必要な引き上げを見送る理由にはできないと読めます。均等積立方式を採っていても、劣化の状況や工事費の高騰で費用は変わるため、5年程度ごとに長期修繕計画を見直して積立金を設定し直すことが必要だと、ガイドラインは書いています。 お住まいのマンションの長期修繕計画や管理規約がどうなっているかは、それぞれのコーナーで確かめてみてください。

考えるための問い

  • 自分のマンションの長期修繕計画から、残高、集める総額、繰入額を拾って計画期間全体の平均額を出すと、目安の幅のどのあたりに入りますか。
  • 繰入額に見込んでいる駐車場使用料は、いま実際に集まっている使用料と比べて多すぎませんか。
  • 計画のはじめと最後の月額は、平均額の0.6倍以上、1.1倍以内に入っていますか。入っていない場合、次の見直しでどう変えるのがよいでしょうか。

出典