サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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防災南海トラフ地震臨時情報が出たら、マンションで何をするか

南海トラフ沿いで大きな地震などが起きると、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報」を出すことがあります。2024年8月には初めて「巨大地震注意」が出て、1週間にわたり政府から特別な注意が呼びかけられました。このとき、何をすればよいのか分かりにくかったという声があったことを、内閣府はのちの検証でまとめています。臨時情報が出てから次の地震が来るかどうか分からない間に、マンションの住民と管理組合が迷わず動けるよう、臨時情報の種類と求められる行動、2024年8月の経過、平時に決めておけることを、気象庁、内閣府、国土交通省、自治体の資料で確かめて並べます。地震が起きたあとの在宅避難の備えや地震保険は、別の記事で扱っています。

臨時情報の種類と出るまでの時間

気象庁によると、南海トラフの想定震源域やその周りでマグニチュード6.8以上の地震が起きたときや、ひずみ計(地下の岩盤の伸び縮みを測る機械)に大きな変化が出たときなどに、まず臨時情報(調査中)が出ます。そのあと専門家の評価検討会が開かれ、早くても現象から2時間ほどで、次のどれかが出ます。
  • 巨大地震警戒:想定震源域のプレート境界で、モーメントマグニチュード(地震の規模の測り方の一つ)8.0以上の地震が起きたと評価されたとき。
  • 巨大地震注意:監視する範囲でモーメントマグニチュード7.0以上の地震が起きたとき(警戒に当たる場合を除く)や、プレート境界で通常と違う「ゆっくりすべり」が起きたと評価されたとき。
  • 調査終了:どちらにも当たらないと評価されたとき。
気象庁は、臨時情報が出ないまま大地震が起きることもあるとして、日頃からの備えを求めています。

呼びかけられる行動と期間

内閣府の資料は、次の大地震が起きる可能性を数字で示しています。平時に1週間以内に大規模地震が起きる可能性は約0.1%(千回に1回程度)です。世界の地震の統計では、巨大地震注意に当たる場合は約1%(百回に1回程度)、巨大地震警戒に当たる場合は約10%(十回に1回程度)に上がります。高まってはいても、多くの場合は何も起きないという数字です。 巨大地震注意が出たとき、防災対応をとるべき地域(南海トラフ地震防災対策推進地域)の住民に求められるのは、日頃の備えの再確認と「特別な備え」です。日頃の備えとは、避難場所と避難経路、家族との連絡手段、家具の固定、非常食などの備蓄を確かめることです。特別な備えとは、すぐに逃げられる態勢を保つことと、非常持出品をいつも身につけておくことです。そのうえで仕事や暮らしは続けます。期間は地震から1週間(168時間たったあとの正時まで)です。ゆっくりすべりで出た場合は、すべりの変化が収まってから、変化していた期間とおおむね同じ期間がたつまでとされています。 巨大地震警戒が出たときは、市町村があらかじめ町丁目ごとに決めた「事前避難対象地域」の住民が、市町村の指示に従って1週間、安全な場所へ前もって避難します。地域の全住民が対象の場合と、高齢者など避難に時間のかかる人だけが対象の場合があります。それ以外の住民は注意のときと同じ備えを1週間行い、さらにもう1週間、特別な備えを続けます。内閣府のガイドラインは、この1週間という長さは観測や予測から出したものではなく、地震の可能性と、避難を続けることを社会が受け入れられる限度とから前もって決めたものだと説明しています。

2024年8月に初めて出た「巨大地震注意」

2024年8月8日16時43分ごろ、日向灘でマグニチュード7.1の地震が起き、宮崎県日南市で震度6弱を観測しました。気象庁は17時00分に臨時情報(調査中)を、19時15分に臨時情報(巨大地震注意)を出しました。消防白書によると、2019年5月の運用開始から初めての発表です。異常な現象が観測されないまま1週間がたち、政府の特別な注意の呼びかけは8月15日17時に終わりました。気象庁は、大地震の可能性がなくなったわけではないとして、日頃からの備えを続けるよう求めています。 内閣府は同じ年の12月に検証結果をまとめました。自治体や事業者へのアンケートなどから、臨時情報がふだん十分に知られておらず、受け取った側に戸惑いがあったことを確かめています。地震の可能性が高まったという不確かな状況で、平時に加えて何をすればよいのかが分かりにくかったという声もありました。改善策として、平時との違いをはっきり示すことと、出たときの行動を各自が前もって決めておけるようにすることが挙がり、買いだめや買い急ぎ、偽の情報への注意の呼びかけも加えられています。

マンションで平時に決めておけること

臨時情報が出てから地震が来るまでに何時間あるのか、そもそも来るのかは分かりません。出たその日に話し合いを始めても間に合わないため、決められることは平時に決めておくことになります。国土交通省のマンション標準管理規約(令和7年改正)は管理組合の業務に「防災」を挙げ、そのコメントで、防災マニュアルの作成と周知、防災訓練、防災情報の収集と周知、防災用名簿の作成、防災物資の備蓄などを例に挙げています。管理組合とは別に防災の組織をつくり、そちらが中心になるやり方も考えられるとしています。 住民一人ひとりにとっては、特別な備えへすぐ切り替えられるよう、日頃の備えをすませておくことが土台になります。板橋区のマンション防災マニュアルは、高層階では揺れが大きくなって家具が倒れたり動いたりしやすいことと、エレベーターに閉じ込められるおそれがあることを課題に挙げています。避難は階段が原則で、乗っているときに揺れたら全部の階のボタンを押して止まった階で降りる、閉じ込められたら非常電話で助けを呼び、扉をこじ開けない、と書いています。同区が載せている東京消防庁の資料は、震度4程度以上の地震でエレベーターが止まるとし、倒れた家具がドアをふさがない配置や、居住者どうしで安否を確かめる仕組みづくりを勧めています。 管理組合にとっては、臨時情報が出たら誰が何を確かめるのかをマニュアルに書いておくと、迷わずに動けます。内閣府の事例集には、巨大地震注意のとき、あるホテルがエレベーターの閉じ込めに備えて管理会社の連絡先を確かめ直し、消火器や備蓄品を点検した例が載っています。マンションに置きかえると、エレベーター保守会社と管理会社の連絡先、防災倉庫の中身、掲示板や連絡網で住民に知らせる文面などが、確かめる候補になります。 安否確認には名簿が要ります。板橋区のマニュアルは、居住者名簿とは別に助けが必要な人の名簿をつくることを勧め、本人の同意を得る、鍵のかかる場所に保管する、複数の担当者で鍵を管理する、目的外に使わない、といった決まりを前もって定めるよう書いています。横浜市のように、マンション防災マニュアル作成の手引きや防災アドバイザーの派遣を用意している自治体もあります。お住まいのマンションの規約や防災の取り決めがどうなっているかは、管理規約や防災マニュアルで確かめてみてください。

考えるための問い

  • 自分のマンションが南海トラフ地震防災対策推進地域や事前避難対象地域に入っているかを、市町村のホームページで確かめたことがありますか。
  • 巨大地震注意が夜に出たとき、理事会の誰が何を確かめ、住民にどう知らせるかが、防災マニュアルに書かれていますか。
  • 助けが必要な住民の名簿を、本人の同意と保管の決まりをつけて用意できていますか。

出典