サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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暮らしとトラブルマンションのペット飼育、規約で決めることと変えるときの決議

犬や猫を飼ってよいかどうかは、マンションの暮らしで意見が分かれやすい話題です。鳴き声やにおい、廊下やエレベーターでの行き会いなど、飼う人と飼わない人の利害が同じ建物の中でぶつかるからです。ここでは、国土交通省のマンション標準管理規約(令和7年10月17日改正。以下「標準管理規約」)のコメントがペット飼育をどう扱っているか、ペット可から禁止へ、または禁止から可へ変えるときにどれだけの賛成が要るか、すでに飼っている人はどうなるかを、法律と裁判例で確かめて並べます。総会にペットの議案が出たとき、それが規約を変える話なのか細則を変える話なのかを見分け、賛否を自分で判断する手がかりになります。

ペットの可否は規約で、細かい手続きは使用細則で

標準管理規約の第18条は、建物や敷地の使い方について、別に使用細則(規約の下に置く細かな決まり)を定めるとしています。コメントは、使用細則で決める事項の例として、動物の飼育やピアノの演奏などを挙げています。 そのうえでコメントは、犬や猫などのペットを認めるか認めないかは、規約で定めるべき事項だとしています。基本は規約に書き、届出の手続きなどの細部を使用細則に任せることはできる、という整理です。この区別は決め方の違いにつながります。標準管理規約では、使用細則の変更は総会の普通決議(出席組合員の議決権の過半数)で決められますが(第47条第2項、第48条)、規約の変更には特別決議が要ります(第47条第3項)。

認める場合と禁止する場合の規定例

コメントは、飼育を認める場合に定めておく必要がある事項として、次を挙げています。
  • 飼える動物の種類や数の限定
  • 管理組合への届出や登録による、飼われている動物の把握
  • 専有部分での飼い方、共用部分の使い方、ふん尿の始末など、飼い主が守ること
  • 飼育が原因で起きた被害の責任
  • 違反した人への措置
規定例も二つ示されています。禁止する場合の例は、専有部分か共用部分かを問わず犬や猫などの飼育を禁じたうえで、専有部分の中のかごや水槽だけで飼う小鳥や観賞魚と、身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)を除く書き方です。認める場合の例は、飼いたい人に使用細則とペット飼育の細則を守らせ、ほかの居住者から苦情が出て改善の勧告にも従わないときは、理事会が飼育禁止を含む措置をとれるとしています。 補助犬については法律にも定めがあります。身体障害者補助犬法の第11条は、住宅を管理する者は、そこに住む身体障害者が補助犬を使うことを拒まないよう努めなければならないとしています。

変えるときの決議と「特別の影響」

ペットの可否を規約で定めているなら、可から禁止へ、禁止から可へ、どちらに変えるにも規約の変更が必要です。区分所有法の第31条第1項は、規約の変更を集会(総会)の特別決議で行うと定めています。令和8年4月1日施行の改正後(2026年10月時点で施行中)の条文では、区分所有者と議決権の各過半数が出席した総会で、出席者とその議決権の各4分の3以上の賛成が要ります。改正前は、出席者ではなく区分所有者全体と議決権全体の各4分の3以上でした。欠席が多くても決めやすくなった一方で、定足数(総会の成立に必要な出席)を満たさなければ決議できません。標準管理規約の第47条第3項も同じ形に改められています。 同じ第31条第1項は、規約の変更が一部の区分所有者の権利に「特別の影響」を及ぼすときは、その人の承諾を得なければならないとしています。この部分は改正の前後で変わっていません。標準管理規約の第47条第9項はこれを受けて、承諾を求められた組合員は正当な理由がなければ拒めないと定めています。ペットを禁止に変えるときは、いま犬や猫を飼っている人がこの「特別の影響」を受ける人に当たるかどうかが争いになります。

すでに飼っている人と東京高裁の判決

この点を判断した裁判例に、東京高裁平成6年8月4日判決(犬の飼育禁止請求事件、高裁判例集47巻2号141頁)があります。裁判所のサイトに載っている判示事項と裁判要旨によると、判決は二つのことを述べています。 一つ目は、マンション内の動物飼育を規約で一律に禁止することは区分所有法が許しており、具体的な被害が出た場合に限っていないからといって当然に無効にはならない、という点です。 二つ目は、犬を飼っている区分所有者がいる中で、規約を改正して禁止の規定を新しく設けても、その飼育がペットとしてのものにとどまるなら、第31条第1項の「特別の影響」には当たらない、という点です。ただし、家族の自閉症の治療に必要であるなど、その犬が生活に客観的に欠かせないといえる特段の事情があれば別だとしています。 この判決の考え方に立つと、ペットとして飼っているだけの人は、承諾をしなくても特別決議で禁止に変えられることになります。もっとも、これは平成6年の一つの高裁判決で、要旨自体が特段の事情によって結論が変わる余地を残しています。なお、禁止に変えたときにすでに飼われている動物をどう扱うかについて、標準管理規約のコメントに規定例は見当たりませんでした。

飼い主に求められることと飼い主の会

環境省の「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」(平成22年2月)は、マンションやアパートも対象に含め、集合住宅で飼う人が守ることを具体的に挙げています。上下左右の住戸の人に飼っていることを知らせる、共用部分のベランダに出さない、自宅や決められた場所の外でえさやりやブラッシングをしない、共用部分ではなるべく抱いて移動する、エレベーターでは同乗する人の了解を得るか途中の階でいったん降りる、といった内容です。 このガイドラインと東京都の「集合住宅における動物飼養モデル規程」は、どちらも飼い主の会(ペットクラブ)をつくることを勧めています。飼い主全員と入会を希望する居住者で構成し、管理組合の指導のもとで、飼われている動物の登録、飼い方の普及、苦情の受け付け、違反した飼い主への指導などを受け持つ会です。東京都のモデル規程は、会の指導でも解決しないときは管理組合が指導し、それでも解決しなければ飼育を禁止できるとしたうえで、禁止された飼い主は新しい飼い主を探すなど速やかに対応するよう定めています。 ご自分のマンションの規約や使用細則でペットがどう扱われているかは、管理規約のコーナーで確かめてみてください。

考えるための問い

  • 自分のマンションでは、ペットの可否が規約に書かれていますか。それとも使用細則だけに書かれていますか。
  • ペット可の場合、届出や登録の仕組み、苦情が出たときにだれがどう動くかは決まっていますか。
  • 可否を変える議案が出たとき、いま飼っている人や補助犬を使う人の扱いを、あわせて決めておく必要はないでしょうか。

出典