サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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法律と規約バルコニーや窓ガラスは誰のものか、専有と共用の境目

住戸は自分のものですが、壁の中のコンクリート、窓ガラス、玄関扉の外側、バルコニーは、多くのマンションの規約では住戸の持ち主だけのものではありません。この境目を知らないまま窓を断熱ガラスに替えたり、バルコニーに物置を据え付けたりすると、規約に反する工事になることがあります。逆に、割れた窓ガラスの入れ替えのように、みんなの持ち物なのに住戸の側が費用を持つ場面もあります。ここでは、区分所有法の定義と、国土交通省のマンション標準管理規約(令和7年10月17日改正。以下「標準管理規約」)の決まりをもとに、どこまでが自分のもので、修理や工事を誰が行うのかを確かめます。リフォームを考えるときにも、理事会で工事の申請を審査するときにも、判断の手がかりになります。 ## 区分所有法が決めていること ここで挙げる区分所有法の条文は、令和8年4月1日施行の改正後のもの(2026年10月時点で施行中)です。第1条、第2条、第4条の文言は、改正の前後で変わっていません。 第1条は、一棟の建物のうち、構造上区分されていて独立して住まいなどに使える部分を、それぞれ所有権の対象にできると定めています。第2条は、その対象となる部分を専有部分と呼び、それ以外の建物の部分と、専有部分に属さない建物の附属物などを共用部分と呼んでいます。 共用部分には二つの種類があります。廊下や階段室のように、構造上みんなで使う部分は、法律上当然に共用部分です(第4条第1項)。一方、本来は専有部分にできる部屋や附属の建物も、規約で共用部分にできます(第4条第2項)。この場合は、登記をしなければ第三者に対して主張できません。 法律が引く線はここまでです。壁や床のどこまでが専有部分か、窓や玄関扉がどちらに入るかは、条文だけでは決まりません。そのため各マンションが規約で線を引いており、その手本になっているのが標準管理規約です。 ## 標準管理規約第7条の線引き 標準管理規約の第7条は、住戸番号を付けた住戸を専有部分とし、住戸を仕切る部分の扱いを次のように決めています。 - 天井、床、壁:躯体部分(建物を支えるコンクリートの構造体)を除いた部分を専有部分とする - 玄関扉:錠と内部塗装部分だけを専有部分とする - 窓枠と窓ガラス:専有部分に含めない コンクリートの内側の部分と、玄関扉の錠や内側の塗装は自分のものですが、コンクリートそのもの、玄関扉の本体、窓は共用部分になります。第3項は、その住戸だけが使う設備のうち、共用部分の中にある部分を除いたものを専有部分としています。同規約のコメント(国交省による解説)は、専用かどうかを設備の働きで判断するとしています。 なぜこう分けたのかについて、コメントは、使い方を制限すべき部分と、複数の住戸で使う部分を共用部分にしたと説明しています。外観をつくる部分は外観を変える加工を、建物を支える部分は構造の変更を禁じる趣旨です。あわせて、この区分は費用を誰が持つかと必ずしも結びつかないとも書いています。雨戸や網戸がある建物では、窓と同じ扱いの項目に加えるよう勧めています。 ## 別表第2に並ぶ共用部分 第8条は、共用部分の範囲を別表第2に任せています。別表第2には、建物の部分として、エントランスホール、廊下、階段、屋上、屋根、パイプスペース、内外壁、界壁(住戸と住戸の間の壁)、床スラブ(コンクリートの床板)、柱、基礎、バルコニーなどが並びます。メーターボックスも共用部分ですが、中の給湯器ボイラーなどの設備は除かれています。 設備では、エレベーター、電気、給水、排水、消防と防災、オートロック、宅配ボックス、集合郵便受箱、配線と配管が挙がっています。配管の境目は細かく決められていて、給水管は本管から各住戸のメーターまで、雑排水管と汚水管は継手と立て管が共用部分です。管理事務室や集会室も並びます。法律上は専有部分にできる部屋を、規約で共用部分にした例です。 ## バルコニーと窓は「専用使用権」のある共用部分 バルコニーや窓は共用部分ですが、実際に使うのはその住戸の人だけです。標準管理規約の第14条と別表第4は、各住戸に接するバルコニーと、各住戸に付いている玄関扉、窓枠、窓ガラスについて、その住戸の区分所有者に専用使用権(共用部分の一部を特定の人だけが使える権利)を認めています。住戸を貸した場合は、借りた人も使えます。 専用使用権があっても、持ち物になるわけではありません。コメントは、通常の使い方に従うこと、管理に必要な範囲でほかの人の立入りを受けることがあることを、この権利に伴う制限として挙げています。物を据え付けることや外観を変えることの禁止は、物件ごとに使用細則で決めるとしています。 区分所有者の工事の考え方を示した別添2は、バルコニーに物を固定する工事のうち、決められた場所(エアコン室外機の置き場など)以外への設置を、理事会の承認が要る工事にしています。確かめる点は、避難の妨げにならないか、防水層や排水を傷めないか、躯体にボルトを打ち込まないかです。バルコニーへの増築は、専用使用の範囲を超えるとして、禁止する行為の例に挙がっています。 ## 修理と交換は誰が行うか 区分所有法第18条は、共用部分の管理を集会(総会)の決議で決めるとしつつ、保存行為(壊れたところを直して今の状態を保つこと)は各共有者が行えるとしています。ただし、規約で別の定めをしてもかまいません。標準管理規約の第21条は、この余地を使っています。 第21条第1項は、共用部分の管理を管理組合の責任と負担で行うとしたうえで、バルコニーや窓などの保存行為のうち通常の使用に伴うものは、専用使用権を持つ人が行うとしています。コメントは、その例としてバルコニーの掃除と、割れた窓ガラスの入れ替えを挙げています。経年劣化は管理組合が計画修繕で直しますが、修繕の周期より早く、ほかの住戸より目立って傷んだ場合は、特別な事情がない限り住戸の側が直すとしています。第三者の犯罪で壊れたときは管理組合、同居人や借りている人が壊したときは住戸の側の負担です。 住戸の側が勝手に共用部分を直せるわけでもありません。第3項は、通常の使用に伴う保存行為を除き、理事長の承認なしに共用部分の保存行為をすることを認めていません。例外は急ぐ場合で、コメントは、台風で割れた窓ガラスを同じ仕様のものに張り替える例を挙げています。 ## 窓や玄関扉の改良工事 窓や玄関扉が共用部分なら、性能を上げる工事は誰が行うのでしょうか。標準管理規約の第22条は、窓枠、窓ガラス、玄関扉などの開口部の改良工事のうち、防犯、防音、断熱などの性能を上げるものを、管理組合が計画修繕として行うと定めています。コメントは、複層ガラスやサッシへの交換、内窓や外窓の取り付けを例に挙げています。 第2項は、管理組合がすぐに工事をできないときは、理事長に申請して承認を受ければ、区分所有者が自分の責任と負担で工事できるとしています。承認するかどうかは理事会の決議で決めます。開口部は住戸ごとに形や材料が大きく違うものではないので、方法や材料に問題がなければ、工事のたびに総会の決議を求めなくてよい、というのがコメントの説明です。別添2は、確かめる点として、色や形、位置、防犯性や防音性が下がらないかを挙げています。 なお、令和8年4月1日施行の改正で、区分所有法第18条に新しい項が加わりました。規約に特別の定めがあれば、共用部分の管理に伴って必要になる専有部分の保存行為なども、集会の決議で決められます。標準管理規約の第21条第2項は、専有部分の配管のうち共用部分と構造上一体になった部分を、総会の決議を経て管理組合が共用部分と一緒に直せるとしています。 ご自分のマンションの規約で、専有部分の範囲やバルコニーの使い方、窓の工事の手続きがどうなっているかは、管理規約のコーナーで確かめてみてください。 ## 考えるための問い - 自分のマンションの規約では、窓枠や窓ガラス、玄関扉は専有部分と共用部分のどちらに入っていますか。雨戸や網戸の扱いは書かれていますか。 - バルコニーに置いてよい物、据え付けてよい物は、使用細則で決まっていますか。避難の妨げになる置き方を誰が確かめていますか。 - 断熱のための窓の交換を一部の住戸が先に行いたいと申し出たとき、理事会は何を基準に承認し、計画修繕との関係をどう説明しますか。 ## 出典 - 建物の区分所有等に関する法律(e-Gov法令検索・令和8年4月1日施行時点) - マンション標準管理規約(国土交通省・令和7年10月17日改正)