運営高齢化で役員のなり手がいないとき、規約で何を変えられるか
理事の順番が回ってきたけれど、足腰が弱って理事会に通うのがつらい。そういう声は、築年数を重ねたマンションほど聞かれるようになります。役員をだれが務められるか、断れるのか、引き受けた人に何かお礼をするのかは、それぞれのマンションの管理規約と総会の決め方しだいです。国の調査で高齢化と役員選びの実態を確かめ、国が示す規約のひな形(標準管理規約)にどんな選択肢があるかを知っておくと、自分のマンションで規約を見直す話が出たときに、何を比べればよいかが見えてきます。
数字で見る高齢化と役員の担い手
国土交通省の令和5年度マンション総合調査(令和6年6月21日公表)では、世帯主が70歳以上の割合が25.9%で、前回の平成30年度調査より3.7ポイント増えました。完成した年が古いマンションほどこの割合は高く、昭和59年以前に完成したマンションでは55.9%と半数を超えています。 役員そのものの年代を見ると、全体では60歳代が24.8%、70歳代が16.8%、80歳以上が3.2%でした。管理組合に将来の不安を尋ねた問い(複数回答)では、「区分所有者の高齢化」が57.6%で最も多く、「理事の選任が困難」も27.6%ありました。高齢化と役員選びの難しさは、管理組合自身が先行きの心配として挙げている事柄です。輪番制が主流、辞退の扱いは規約しだい
同じ調査で役員の選び方を尋ねたところ(役員を選んでいる1,532組合、複数回答)、「順番」が78.3%で最も多く、「立候補」が34.5%、「推薦」が16.8%、「抽選」が8.1%でした。住戸の並びなどで順に回す輪番制が、多くのマンションで役員選びの土台になっています。 一方、標準管理規約の本文は、理事と監事を総会の決議で選ぶと定めるだけで、輪番制にするかどうかや、順番が回ってきた人が辞退できるかどうかは書いていません。高齢や病気、家族の介護などを理由に順番を飛ばしてよいか、飛ばした人に別の役割をお願いするかは、各マンションが規約や細則、総会の決議で決めることになります。決まりがないまま、そのつど理事会で判断することになると、断られた側と引き受けた側のあいだで不公平感が生まれるおそれがあります。標準管理規約が示す役員の資格
標準管理規約は令和7年10月17日に改正されました(以下、この令和7年改正版で説明します)。第35条第2項は、理事と監事を「組合員のうちから」総会で選ぶ形を基本にしています。同じ条文へのコメント(国土交通省による解説)は、管理組合は区分所有者全員でつくる団体なので、住んでいるかどうかに関係なく区分所有者であることを資格にしたと説明しています。そのうえで、平成23年の改正前のように「現に居住する組合員」に限る居住要件を加えることも考えられる、としています。 組合員以外から選ぶ道も、選択肢として示されています。第35条第2項から「組合員のうちから」を外し、組合員以外の人を選ぶ場合の手続きを細則で定める規定例です。コメントは、その相手としてマンション管理士、弁護士、建築士など専門知識をもつ人を想定しています。役員になれない人(破産して復権していない人、拘禁刑以上の刑を受けて執行を終えるなどしてから5年たっていない人、暴力団員とやめて5年たっていない人)は、第36条の2で定められています。 実際の規約はどうなっているでしょうか。令和5年度調査で、管理規約で役員に選べる範囲を尋ねたところ(複数回答)、「居住の組合員」が96.6%、「居住していない組合員」が24.6%、「居住組合員の同居親族」が28.7%、「外部専門家」が1.8%でした。同居する家族を役員に選べる規約は、4組合に1組合を少し上回ります。家族が理事会に代わりに出る仕組み
標準管理規約のコメントには、役員に選ぶこととは別に、理事本人が出られない理事会に家族が代わりに出る方法も書かれています。理事の負担を軽くするため、あらかじめ職務代行者を決めておき、本人が欠席するときに理事会への出席と議決権の行使を任せる、というものです。 この方法をとるには、職務代行者を認めることと、だれを職務代行者にできるかを、規約にはっきり書く必要があります。コメントが示す規定例では、範囲を理事の配偶者(事実婚を含む)か一親等の親族に限り、理事に選ばれる総会などで職務代行者の氏名を示して承認を得ることにしています。事前の承認を前提に、範囲を「同居する親族」などへ広げることも考えられる、とされています。役員になるのはあくまで組合員本人で、家族は出席を代わるだけという点が、同居親族を役員に選べる規約との違いです。役員報酬と協力金の考え方
標準管理規約第37条第2項は、役員が「別に定めるところにより」、活動に応じた必要経費の支払いと報酬を受けられると定めています。報酬を払うかどうか、いくらにするかは、細則などで管理組合が決めます。コメントは、外部の専門家が役員になる場合について、理事会での協議に加わる負担や専門的な能力による寄与などを考えて報酬を払うことも考えられる、と述べています。 役員を引き受けない人にお金で負担してもらう考え方については、最高裁の判決があります。平成22年1月26日の最高裁第三小法廷判決は、総戸数868戸のマンションで、自分で住んでいない組合員(約170〜180戸分)に月額2,500円の「住民活動協力金」を課した規約変更について、法律がその組合員の承諾を求める「特別の影響」には当たらないと判断しました。判決は、住んでいない組合員が役員になる義務を免れるなど組合活動に貢献しないまま、ほかの組合員の働きで保たれる住環境の利益を受けていること、負担の増え方がほかの組合員の負担の約15%増しにとどまることなどを理由に挙げています。この判断はこの事案の事情を踏まえたもので、金額や理由が違う協力金にもそのまま当てはまるとは限りません。 役員のなり手がいない場合の別の手として、区分所有者以外の人に管理者をまかせる「第三者管理」があります。この方式の利点と心配点は、「管理会社が管理者になる『第三者管理』の利点と心配点」の記事で扱いました。考えるための問い
- 役員の順番が回ってきた人が高齢や病気で引き受けられないとき、だれがどの決まりに沿って判断するでしょうか。免除の条件は文章になっているでしょうか。
- 同居する家族を役員に選べるようにすることと、家族が理事会への出席だけを代わることのどちらが、自分のマンションの実情に合うでしょうか。
- 役員を務める人に報酬を払う、あるいは務めない人に協力金をお願いするとしたら、その金額と理由を組合員全員に納得してもらえるでしょうか。A棟の規約ではどうなっているか、管理規約のコーナーで確かめてみてください。