サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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お金管理費・修繕積立金を滞納されたとき、管理組合は何ができるか

管理費や修繕積立金を払わない住戸が出ると、その分の負担はほかの組合員にかかり、日々の管理や将来の修繕の資金が細っていきます。国土交通省のマンション標準管理規約(令和7年10月17日改正。以下「標準管理規約」)のコメントも、滞納者への対応を管理組合(理事長)の最も重要な職務の一つとしています。ここでは、督促から裁判所の手続き、区分所有法の特別な決まりまで、管理組合が取れる手だてを順に並べます。理事になったときに慌てないためにも、組合員として理事会の判断を確かめるためにも、全体の順序を知っておくと役に立ちます。

標準管理規約が定める督促と理事長の役目

標準管理規約の第60条は、滞納への対応を次のように定めています。
  • 期日までに納めない組合員には、未払いの額に年利○%の遅延損害金(遅れたことへの損害金)と、違約金としての弁護士費用、督促や徴収にかかった費用を足して請求できる(第2項)
  • 管理組合は、督促など必要な措置をとる(第3項)
  • 理事長は、理事会の決議により、管理組合を代表して訴訟その他の法的措置を進められる(第4項)
利率が「○%」と空欄なのは、各マンションが自分の規約で決めるからです。コメントは、管理組合の回収には手間と時間がかかることなどを理由に、利息制限法や消費者契約法の利率より高く決めることも考えられるとしています。また、遅延損害金や弁護士費用は「請求できる」と書かれていますが、合理的な事情がない限り請求すべきだとも述べています。弁護士費用には司法書士の費用も含まれます。 督促の進め方は、標準管理規約の別添3に例があります。1か月目は電話と「未納のお知らせ」、2か月目は請求書、3か月目は催告書、4か月目は自宅訪問、5か月目は内容証明郵便、と段階を上げていきます。別添3は、うっかり忘れていた人はたいてい3か月以内に払うという過去の実績も紹介しています。並行して、滞納者の住戸に抵当権がついているかや、ほかの財産の有無を調べておくことも勧めています。

5年の消滅時効に気をつける

滞納分を放っておくと、時効で請求できなくなるおそれがあります。民法第166条では、債権は、権利を使えると知った時から5年、使える時から10年たつと時効で消えます。管理組合は毎月の納入期日を知っているので、各月の分はその期日から5年で時効にかかると考えておくのが安全です。 時効を止める方法も民法にあります。内容証明郵便などで催促すると、そこから6か月は時効が完成しません(第150条)。ただし、その間にもう一度催促しても延びません。裁判所への訴えや支払督促を申し立てると、手続きの間は時効が完成せず(第147条)、判決などで確定した権利の時効は10年になります(第169条)。滞納者が「払います」と認めた場合は、そこから時効が数え直しになります(第152条)。分割払いの約束を書面でもらうのは、この承認の証拠を残す意味もあります。

裁判所を使う手続き、支払督促と少額訴訟

督促しても払われないときは、裁判所の手続きを使えます。費用と手間の少ない方法が二つあります。 支払督促は、相手の住所地を受け持つ簡易裁判所の書記官に申し立てる手続きです。書類の審査だけで進み、裁判所に出向く必要はありません。相手が受け取ってから2週間以内に異議を出さなければ、申立てにより仮執行宣言が付き、強制執行(財産の差押え)に進めます。相手が異議を出すと、通常の訴訟に移ります。 少額訴訟は、60万円以下のお金の支払いを求める訴えで、原則1回の審理で判決まで進む手続きです。証拠はその日にすぐ調べられるものに限られ、同じ裁判所での利用は1人年10回までです。判決では分割払いや支払いの猶予が命じられることもあります。標準管理規約の別添3も、滞納者のほかの財産が分かったときの手段としてこの手続きを紹介しています。

区分所有法の先取特権と、買った人への請求

区分所有法には、管理費等を守るための特別な決まりがあります。ここで挙げる条文は、令和8年4月1日施行の改正後のもの(2026年10月時点で施行中)で、第7条と第8条の文言は改正の前後で変わっていません。 第7条は、規約や総会の決議にもとづく債権について、滞納者の区分所有権(敷地利用権を含む)と建物に備え付けた動産の上に先取特権(ほかの債権者より先に支払いを受けられる権利)を認めています。別添3の解説によると、判決などを取らずに住戸の競売を申し立てられるのが強みです。一方で、税金や登記された抵当権には負けるため、住宅ローンの残りが多い住戸では回収が見込めないこともあります。 第8条は、この債権を特定承継人(売買や競売で住戸を買った人など)にも請求できると定めています。標準管理規約も第26条で同じ趣旨を置いています。滞納のある住戸が売られても、管理組合は買った人に請求できるということです。

最後の手段としての競売請求

区分所有法第59条は、共同の利益に反する行為で共同生活の障害が著しく、他の方法では解決が難しいとき、総会の決議にもとづいて、訴えで滞納者の区分所有権の競売を請求できると定めています。別添3は、長期で多額の滞納がこの行為に当たるとした裁判例を紹介しています。そのうえで、先取特権の実行や財産の差押えでも回収できない場合でなければならないとし、前提として財産調査を尽くすよう求めています。 決議の決め方は、令和8年4月1日施行の改正で変わりました。第59条が準用する第58条第2項は、改正前は区分所有者と議決権の各4分の3以上でした。改正後は、定足数(区分所有者と議決権の各過半数の出席)を満たした総会で、出席者と議決権の各4分の3以上となっています。決議の前に、本人に弁明の機会を与えなければなりません。判決が確定してから6か月を過ぎると、競売を申し立てられなくなります(第59条第3項)。競売で住戸を買った人には、第8条により滞納分を請求できます。 ご自分のマンションの規約で遅延損害金の利率や督促の手順がどう決まっているかは、管理規約のコーナーで確かめてみてください。

考えるための問い

  • 自分のマンションの規約では、遅延損害金の利率や、弁護士費用を滞納者に請求できることが決まっていますか。
  • 滞納が何か月続いたら、だれが、どの手続きに進むかを、理事会であらかじめ決めていますか。理事が交代しても引き継がれる形になっていますか。
  • 古い滞納分が5年の時効にかからないよう、滞納の一覧と督促の記録をだれが管理していますか。

出典