サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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暮らしとトラブル上の階から水漏れしたとき、誰が直して誰が払うのか

マンションでは、上の階の住戸から水が漏れて、天井や壁紙、家具が濡れる事故が起こります。困るのは、修理の手配と費用を誰が受け持つのかが、その場では分からないことです。答えは、水がどこから漏れたかで変わります。漏れた管が個人の持ち物なのか全員の持ち物なのかによって、責任を負う人も、使える保険も入れ替わるからです。区分所有法と国土交通省のマンション標準管理規約が配管をどう分けているかを知っておくと、事故のあと管理会社や保険会社に何を確かめればよいかが分かります。

専有部分と共用部分はどう分かれるか

区分所有法第2条は、区分所有権の対象となる建物の部分を専有部分、それ以外の建物の部分や、専有部分に属さない建物の附属物などを共用部分と定めています。第4条は、廊下や階段室のように構造上みんなで使う部分は区分所有権の対象にならないとし、規約で共用部分を決めることも認めています。この記事で挙げる第2条、第4条、第9条は、令和8年4月1日施行の改正の前後で、条番号も中身も変わっていないことを e-Gov 法令検索で確かめました。 具体的な線引きは規約に任されています。標準管理規約(令和7年10月17日改正版)の第7条は、天井、床、壁は躯体(建物の骨組みのコンクリート)を除いた部分を専有部分とし、住戸専用の設備のうち共用部分の中にある部分以外も専有部分としています。第8条と別表第2は共用部分の範囲を挙げ、配管については、給水管は本管から各住戸のメーターを含む部分まで、雑排水管と汚水管は配管継手と立て管(各階を縦に貫く管)を共用部分としています。メーターより先の給水管や、立て管につながるまでの横向きの枝管は、この書き方では専有部分の側に入ります。同規約のコメントは、この区分が費用の負担と必ずしも連動しないとも断っています。

排水管の枝管が共用部分とされた判決

規約の文言だけでは決まらなかった例もあります。最高裁判所第三小法廷は平成12年3月21日の判決で、ある住戸の汚水を本管へ流す排水管の枝管を、区分所有者全員の共用部分にあたると判断しました。その枝管は、上の住戸の床下のコンクリートの床板と、下の住戸の天井板とのあいだを通っており、点検や修理は下の住戸の天井裏からしかできませんでした。こうした事実関係の下で、枝管は専有部分に属さない建物の附属物とされました。管がどこを通り、誰なら手を入れられるかが、判断を左右した例です。

原因の場所で責任を負う人が変わる

漏れた場所が専有部分の設備であれば、損害を賠償するのは原則としてその住戸の側です。民法第717条は、工作物の設置や保存の瑕疵(本来あるべき安全さを欠いていること)で他人に損害を与えたとき、まずそれを占有する人(住んでいる人)が賠償し、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が賠償すると定めています。上の階が賃貸に出されている場合、借りている人と持ち主のどちらが責任を負うかは、この規定で分かれます。 漏れた場所が共用部分であれば、直すのは管理組合です。標準管理規約第21条は、敷地と共用部分等の管理を管理組合の責任と負担で行うと定めています。

原因が分からないときの区分所有法第9条

天井の染みが広がっていても、壁や床の中のどこで漏れたのかがすぐには分からないことがあります。区分所有法第9条は、建物の設置や保存の瑕疵で他人に損害が生じたとき、その瑕疵は共用部分の設置や保存にあるものと推定すると定めています。原因の場所がはっきりしないあいだは、共用部分の問題として扱われるということです。ただし「推定」は、反対の事実が示されればくつがえります。調べた結果、ある住戸の専有部分の管が原因と分かれば、前の節で見たその住戸の側の責任になります。 原因を確かめるには、上の階の住戸に入る必要が出てきます。標準管理規約第23条は、管理を行う者が必要な範囲で他の住戸への立入りを求められること、求められた人は正当な理由がなければ拒めず、拒んで損害が生じれば賠償することを定めています。同条第4項は、放置すれば共用部分や他の住戸に重大な影響を与えるおそれがあるとき、理事長が自ら立ち入れるとしています。コメントは、その例として専有部分での大規模な水漏れを挙げています。

三つの保険はそれぞれ何を払うか

漏水で使われる保険は三つあり、払う相手も対象も違います。
  • 個人賠償責任保険:日常生活で他人の物を壊したときなどに負う、法律上の賠償責任を補償します。日本損害保険協会は、マンションの自宅の水道管などから水を漏らして階下の住戸に損害を与えた例を挙げています。単独でも、火災保険や自動車保険の特約としても契約でき、同居の親族も補償を受ける人に含まれます。自分が所有したり使ったりしている物の損害は対象外なので、自分の住戸の修理には使えません。
  • 個人の火災保険:自分の住戸と家財の損害を補償します。協会の説明では、給排水設備の事故などによる水濡れは、住宅総合保険では補償され、住宅火災保険では補償されません。建物と家財は別々の契約なので、家財を付けていなければ濡れた家具や家電は対象になりません。
  • 管理組合の保険:共用部分を対象にした火災保険で、標準管理規約は共用部分に付ける保険の種類の例として、火災保険(マンション総合保険)と地震保険を挙げています。協会のQ&Aは、管理組合が契約者となって共用部分をまとめて契約する方法が一般的だと説明しています。標準管理規約第24条でも、区分所有者は管理組合がこうした保険を契約することを承認するとされ、保険料は管理費から払います。
管理組合の保険に何が付いているかは、マンションごとに違います。岡山市が紹介した管理組合どうしの交流会の記録では、管理組合で入る保険に個人賠償責任の補償特約を付けられること、事故が専有部分と共用部分のどちらで起きたかで使える保険が違うこと、事故の件数で保険料が変わるので使うかどうかの判断も要ることが話されています。

起きた直後にすること

  1. 水を止めます。自分の住戸から漏れているなら、東京都水道局は、メーターボックスの中のバルブ(止水栓)を右に回せば水が止まると案内しています。上の階から漏れているときは、上の階の人に知らせて止めてもらいます。
  2. 管理会社や理事会に連絡します。東京都水道局も、マンションなどの共同住宅では建物の所有者、管理者、管理会社に連絡するよう案内しています。共用部分の配管が原因であれば管理組合が動く必要があり、上の階への立入りもここで調整します。
  3. 写真で記録します。日本損害保険協会は、保険金の請求で損害を確かめる書類として、修理見積書と被害状況の分かる写真を挙げています。天井の染みや濡れた家財は、片付けや修理の前に撮っておきます。
  4. 保険会社や代理店に連絡します。協会のQ&Aによれば、事故の通知は保険法で義務づけられています。賠償する側は、保険会社に断りなく被害者と約束を交わすと保険金が払われない場合があります。協会は、「保険金が使える」と言って住宅の修理を勧める業者とのトラブルにも注意を呼びかけています。
A棟の規約で配管の区分や保険がどうなっているかは、管理規約のコーナーで確かめてみてください。

考えるための問い

  • 自分の住戸の給水管と排水管のうち、どこまでが専有部分でどこからが共用部分か、規約の別表で確かめたことがあるでしょうか。
  • 自分の火災保険は水濡れと家財を補償する契約か、個人賠償責任の特約が付いているか、保険証券で確かめてあるでしょうか。
  • 個人賠償責任の補償を管理組合の保険にまとめて付けるか、各自で入ってもらうか、自分のマンションにはどちらが合うでしょうか。

出典