運営管理会社が管理者になる「第三者管理」の利点と心配点
理事のなり手が見つからず、同じ人が何期も役員を続けているという話は、多くのマンションで聞かれます。その解決策として広がりつつあるのが、区分所有者ではない人に管理組合の「管理者」をまかせるやり方で、世間では「第三者管理」と呼ばれています。とくに、ふだん管理を請け負っている管理会社がそのまま管理者になる形は、組合員の手間を大きく減らせる一方で、工事の発注やお金の出し入れを管理会社が取り仕切ることにもなります。こうした話が自分のマンションで持ち上がったとき、何を確かめればよいかは、国土交通省のガイドラインにかなり具体的に書かれています。
管理者とは誰のことか
区分所有法では、建物の共用部分などを管理するために「管理者」を置くことができます。国の示す規約のひな形である標準管理規約は、理事長を区分所有法上の管理者とする形をとっています(第38条第2項)。実際、国土交通省の令和5年度マンション総合調査(令和6年6月公表)では、管理者が管理組合の代表者であるマンションが92.1%を占め、区分所有者以外の第三者が管理者になっているマンションは3.7%でした。 国土交通省は、区分所有者以外の人が管理者に就く方式を外部管理者方式と呼び、そのうち管理会社(法律上の言い方では「マンション管理業者」)が管理者になる場合を管理業者管理者方式と呼んでいます。外部の人としては、管理会社のほか、マンション管理士、弁護士、公認会計士などの専門家が想定されています。標準管理規約での外部専門家の扱い
標準管理規約は、平成28年3月の改正で、組合員ではない外部の専門家が役員や管理者に就けるようにする場合の規定例を加えました。いまの標準管理規約(令和7年改正)でも、役員を「組合員のうちから」選ぶという第35条第2項の言葉を外し、組合員以外から選ぶときの選び方を細則で定める形が、選択肢として示されています。あわせて、役員になれない人の条件(第36条の2)や、役員が自分や関係する会社と取引するときは理事会で重要な事実を明らかにして承認を受けるという決まり(第37条の2)も置かれています。 ただし、標準管理規約のコメントは、管理会社が管理者になる方式までは想定していないと明記し、その場合の注意点はガイドラインの第3章を見るよう案内しています。外部専門家の活用を前提にした規約の作りは、管理会社が管理者になる場合にそのまま当てはまるわけではありません。背景にある高齢化となり手不足
令和5年度マンション総合調査では、世帯主が70歳以上の割合が25.9%で、前回調査より3.7ポイント増えました。外部の人を役員に選ぶことを「検討している」または「将来必要になれば検討したい」と答えたマンションは34.6%あり、その理由は「区分所有者の高齢化」が42.7%、「役員のなり手不足」が42.3%でした。一方、専門家を活用しているマンションのうち、活用の中身が「管理者や理事長への就任」だったのは2.9%にとどまります。ガイドラインができるまで
国土交通省は平成29年6月に「外部専門家の活用ガイドライン」を出しました。その後、管理会社が管理者に選ばれる例や、管理会社が管理者になることを前提に分譲される新築マンションが出てきたため、令和5年10月から令和6年3月まで作業部会で検討し、令和6年6月7日に内容を組み直して「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」と改めました。さらに、令和7年に成立した区分所有法などの改正法でマンション管理適正化法も改められたことを受け、令和8年4月に再び改訂されています。導入して得られること
ガイドラインは、一般に言われる利点として、組合員の事務の負担が軽くなり役員のなり手不足の解決策になる場合があること、専門知識をもとに素早く業務を進められる場合があることを挙げています。管理会社が管理者になる場合については、すでに管理を請け負っていればそのマンションの問題に通じていると期待できることから、選択肢の一つになりうると書いています。心配されていること
同じガイドラインは、欠点として、管理者への報酬で管理組合の支出が増えること、管理者と管理組合の利益がぶつかる取引(利益相反)が起きやすくなることを挙げています。管理者の権限が必要以上に強くなると、組合員による監督が弱まり、管理への関心が薄れるおそれがあるとも書いています。 管理会社が管理者になる場合には、懸念がもう一段はっきりします。管理者になった管理会社は、工事を発注する側として、自社やグループ会社と取引できる立場に立つからです。ガイドラインは、こうした取引で本来より高い費用が設定され、管理組合が損をすることがないよう注意を促しています。国土交通省は、運営のしかた次第で、組合員の意思から離れた管理や、管理会社に払う費用の増加が起きるおそれがあるとして、導入するかどうかは利点と欠点を踏まえて慎重に検討するよう求めています。利益相反を防ぐためにガイドラインが示すこと
令和7年の法改正で、管理者になった管理会社が自社やグループ会社と取引するときは、総会の決議の前に説明会を開き、取引の相手、内容と金額、その会社を選ぶ理由、相見積もりの中身(取らなかったときはその理由)を組合員に説明することが義務になりました。義務を果たさない管理会社には、業務停止命令などの処分がありえます。ガイドラインは、このほか次のような仕組みを示しています。- 管理者としての契約と、日常の管理業務の契約を別の契約書にし、社内の担当部門と担当者も分ける
- 管理者の任期は原則1年とし、毎年の総会で続けてもらうかを決め直す
- 総会では、管理者に委任状を渡すより、本人が出席するか、議案ごとに賛否を書く議決権行使書で意思を示す
- 管理組合の口座の印鑑などを管理会社が預かることは原則として認めない
- 監事を置き、少なくとも1人は外部の専門家、ほかに組合員からも選ぶ
- 大規模修繕工事は、組合員と監事でつくる修繕委員会を中心に検討する
- 規約に管理者の会社名を書き込まず、辞めてもらうときに規約改正がいらないようにしておく
考えるための問い
- 役員のなり手が足りない理由は、仕事の量でしょうか、高齢化でしょうか。理事会の回数や役員の人数を見直すだけで済む部分はないでしょうか。
- 管理会社が管理者になったとき、その会社やグループ会社への工事の発注を、だれがどの場面で確かめることになるでしょうか。
- 外部の管理者を交代させたくなったとき、いまの規約のままで総会を開き、新しい管理者を選べるでしょうか。A棟の規約ではどうなっているか、管理規約のコーナーで確かめてみてください。