サザンコーストA棟 資料アーカイブver0.90

マンション管理の基礎知識公的な出典で確かめた、マンション管理の一般的な知識

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お金修繕積立金の「段階増額」と「均等」はどう違うか

修繕積立金の集め方には、最初から同じ額を積み立てる方法と、最初は安くして何年かごとに値上げしていく方法があります。どちらを採っているかで、10年後、20年後に組合員が払う額は大きく変わります。値上げの議案が総会に出たとき、それが計画どおりの値上げなのか、計画そのものの見直しなのかを見分けるには、この二つの方式の違いと、国が2024年に示した値上げ幅の目安を知っておくと役に立ちます。 ## 二つの積立方式の違い 国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」は、積立方法を次の二つに分けて説明しています。 - 均等積立方式:長期修繕計画(今後30年以上の修繕工事と費用の見通し)で見込んだ工事費の合計を、計画期間中ずっと同じ額で積み立てる方法 - 段階増額積立方式:はじめの積立額を低く抑え、段階的に値上げしていく方法 このほか、購入時にまとまった「修繕積立基金」を集める方法や、工事のときに一時金を集めたり金融機関から借りたりすることを前提にした方法もあります。 長期修繕計画作成ガイドラインは、均等積立方式を「基本」とし、計画期間を30年以上で、しかも大規模修繕工事が2回入る長さ以上にするよう求めています。 ## どちらがどれくらい使われているか 国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、回答した管理組合のうち均等積立方式が40.5%、段階増額積立方式が47.1%でした。新しいマンションほど段階増額の割合が高く、1984年以前に完成したマンションでは段階増額が20.7%なのに対し、2015年以降に完成したマンションでは81.2%にのぼります。 同じ調査では、いまの積立額が計画上の額より少ないマンションが36.6%あり、そのうち不足が20%を超えるマンションが11.7%ありました。 ## 国が均等積立方式を勧める理由 ガイドラインは、将来にわたって安定して積み立てる観点から、均等積立方式が望ましいとしています。理由は、段階増額や一時金のように将来の負担増を前提とする方式では、値上げのときに区分所有者の合意がまとまらず、積立金が足りなくなる例が出ているからです。計画に値上げが書いてあっても、そのときに合意できなければ実現しません。 2024年6月の改定では、段階増額について「早期に引上げを完了させること」が望ましいという一文が加わりました。築年数がたつほど必要な積立金は増え、区分所有者の高齢化で負担も重くなっていくことが、その理由として書かれています。 国土交通省の検討会が2023年8月にまとめた資料によると、近年分譲された段階増額のマンション(新築時の予備認定を受けたもの)では、計画の最初から最後までの値上げ幅が平均で約3.6倍あり、10倍を超える計画もありました。 ## 段階増額積立方式の引上げ幅の目安 こうした計画を踏まえ、国土交通省は2024年6月7日、二つのガイドラインに「段階増額積立方式における適切な引上げの考え方」を加えました。均等積立方式にした場合の月額を「基準額」とし、計画のはじめの額は基準額の0.6倍以上、計画の最後の額は基準額の1.1倍以内に収める、という目安です。 基準額は、計画期間全体で集める積立金の総額を、総専有床面積と計画期間の月数で割って求めます(1平方メートル、1か月あたりの額)。たとえば基準額が1平方メートルあたり月250円で、専有面積が70平方メートルの住戸なら、基準額は月1万7,500円です。目安に合う計画では、はじめの額が月1万500円以上、最後の額が月1万9,250円以内になります(この数字は説明のための例です)。 二つの数字は互いに関係しています。ワーキンググループの検討資料は、計画の早い時期に値上げするほど最後の額は基準額に近づき、はじめの額は基準額から離れる傾向があると説明しています。はじめを0.6倍より低くし過ぎると、総額を集めるために後半の額を1.1倍より高くせざるを得なくなります。 この目安には、但し書きがついています。目安は、無理のない値上げで早く引上げを終え、均等積立方式に近づけるためのものであり、工事費の高騰などで長期修繕計画を見直すときに、いまの積立金を大きく引き上げることまで制限するものではない、という趣旨です。 ## 段階増額積立方式が選ばれてきた事情と、均等積立方式の限界 段階増額積立方式にも、選ばれてきた理由があります。2024年の改定前のガイドラインには、新築ではほとんどが段階増額で、購入した人の当初の月々の負担を軽くできるため広く採用されていると言われている、という記述がありました(改定でこの段落は、早く引上げを終えるよう求める記述に差し替えられました)。分譲時の月額を低くできることが、この方式の利点とされてきたわけです。 ガイドラインは、この点を買う側の確認の問題としても扱っています。購入予定者は、示された積立金が将来の値上げを前提にしたものかを確かめ、住宅ローンの返済計画などと照らして無理がないかを検討しておくよう求めています。 一方で、均等積立方式にしたから値上げがなくなるわけではありません。ガイドラインは、どの方式でも5年程度ごとに長期修繕計画を見直し、積立金を設定し直す必要があるとしています。長期修繕計画作成ガイドラインも、均等積立方式でも見直しのたびに必要額が増えることに注意を促し、段階増額の場合は当初見込んだ増額よりさらに増えるので特に注意が要る、と書いています。 国の側にも慎重な見方があります。2024年6月のワーキンググループのとりまとめは、この目安をまず広く知らせ、使われ方や効果を調べたうえで、将来、管理計画認定(自治体がマンションの管理計画を認定する制度)の基準に入れるかを検討するとしています。その検討では、全国一律の基準にすることが妥当かどうかも考えるとしています。 なお、分譲時には均等積立方式にするよう分譲事業者に努力義務を課す条例をもつ自治体もあることが、国の検討会の資料で紹介されています。 ## 考えるための問い - 自分のマンションの修繕積立金は、均等積立方式と段階増額積立方式のどちらで計画されていますか。段階増額なら、今後の値上げは何年後に、いくらの予定ですか。 - 長期修繕計画の積立金の最初の額と最後の額は、計画期間全体の平均額の0.6倍以上、1.1倍以内に収まっていますか。 - 長期修繕計画は最近いつ見直されましたか。見直しで必要額が増えたとき、値上げと一時金のどちらで備えるかを話し合ったことはありますか。 A棟の長期修繕計画や積立金の決まりについては、管理規約のコーナーで確かめてみてください。 ## 出典 - マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省・2024年6月改定) - マンションの修繕積立金に関するガイドライン 新旧対照表(国土交通省住宅局・2024年) - 長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント(国土交通省・2024年6月改定) - 「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の改定について(国土交通省 報道発表・2024年) - 令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状(国土交通省・2024年)